今年から大リーグは対戦方式が変わり、インターリーグ(他リーグとの交流戦)は全15球団と対戦することになりました。6日(日本時間7日)からは、大谷翔平投手(28)がメジャー6年目初対戦となる、本拠地でのカブス3連戦に臨みます。

カブスには同い年でメジャー2年目の鈴木誠也外野手(28)がいます。今年3月のWBCは左脇腹痛のため出場辞退し、開幕も出遅れましたが、4月14日に復帰後は主に4番を任されています。5月16、17日のアストロズ戦では日本人初の3打席連続本塁打をマークするなど、3日(同4日)の試合を終えて打率は2割8分、OPSは・839。いずれもリーグ20位前後にランクインしており、攻守にわたって活躍中。残念ながら、大谷の先発ローテーション変更により8日(同9日)に見込まれた投打での直接対決はなくなりましたが、ともに上位打線で顔を合わせることになりそうです。

大谷は2018年にエンゼルスに入団以来、投手として21球団と対戦し16球団から勝利。また、打者では28球団と対戦し、20球団からホームランを打っています。今後、毎年全チームと対戦を重ねていけば、いずれ全チームから勝利投手、及びホームランという記録も夢ではありません。

私事ながら、6月1日発売の著書「もっと知りたい! 大谷翔平 SHO-TIME観戦ガイド(小学館新書、税込み990円)」でも紹介させていただきましたが、全30球団勝利は20人しかいない名誉です。30球団本塁打は多いですが、こちらも日本人選手の達成者はいません。投打での「全球団コンプリート」なら、唯一無二の大金字塔になるでしょう。1歩でも近づくためにも、大谷にはカブス戦での勝利投手&ホームランを期待したいです。

カブスは1876年のナ・リーグ創設と同時に誕生した、大リーグを代表する老舗球団です。元祖二刀流ベーブ・ルースにとっても、歴史的な対戦相手でした。投打二刀流だったレッドソックス時代の1918年、ワールドシリーズの対戦相手がカブスでした。2試合に先発して2勝を挙げ、当時ワールドシリーズ記録の29回1/3連続無失点をマーク。また、第4戦ではV打となる先制2点三塁打を放つなど、二刀流の実力をいかんなく発揮し、4勝2敗で世界一に貢献しました。

その後、ヤンキース時代の1932年に再びワールドシリーズで対戦。敵地シカゴで行われた第3戦で打席に立つとセンター方向を指さし、「次のボールをあそこに打ち込んでやる!」と怒鳴りました。すると、その1球をセンター後方への特大ホームランにしました。球史に残る「予告ホームラン」として、後世に語り継がれています。

ところが、このエピソードには後日談があります。翌日、シカゴの地元紙には見出しにも、地元ニューヨーク・タイムズ紙にも、それらしき記事が載りませんでした。本塁打を浴びたチャーリー・ルート投手によれば、「2ストライク後に『俺を三振させるにはもう1つストライクが必要なんだ!』」と、指を突き出したという証言が現れました。

確かに、投手に向けて突き出した指はセンター方向を向きます。真相は分かりませんが、予告ホームランの方が、ルース伝説の1ページを彩るのにふさわしいということでしょう。

“現代のルース”と呼ばれる大谷も、初顔合わせのカブス戦で「SHO-TIME伝説」の1ページを書き加えるでしょうか。それとも、同じ94年組の鈴木が盟友のお株を奪うパフォーマンスを見せてくれるなら、それもまた一興です。(大リーグ研究家・福島良一)