先日、全米野球記者協会ニューヨーク支部主催の「アワードディナー」に参加した後、ニューヨーク州クーパーズタウンにある米国野球殿堂博物館まで足を延ばしました。大都会ニューヨークから北西へ314キロ。バスなら5時間半以上、車でも3時間半以上かかる小さな田舎町。人口1600人ほどの町にある野球の聖地は、年間およそ25万人が訪れるそうです。

ニューヨーク州クーパーズタウンにある米野球殿堂博物館
ニューヨーク州クーパーズタウンにある米野球殿堂博物館

私は1977年に初めて行って以来、10度目の訪問となりました。重厚なれんが造りの建物の中に入るとジョシュ・ラウィッチ館長が迎えてくれました。元々は95年ドジャース野茂英雄投手がデビューした時、フロント入りした人物です。

米野球殿堂博物館のジョシュ・ラウィッチ館長と福島良一氏
米野球殿堂博物館のジョシュ・ラウィッチ館長と福島良一氏

彼が「ぜひ、あなたに見せたいものがある」と言って、2階に案内されました。昨年3月のWBC決勝で日本の大谷翔平投手(現ドジャース、当時エンゼルス)が米国のマイク・トラウト(エンゼルス)から三振を奪い、優勝を決めた瞬間にマウンドから投げ飛ばした帽子が展示してありました。

WBC決勝で優勝を決め、日本代表の大谷翔平投手が投げた帽子
WBC決勝で優勝を決め、日本代表の大谷翔平投手が投げた帽子

それと同じ展示コーナーで目を見張ったのが、何とロッテ佐々木朗希投手のボールです。2022年4月10日に日本プロ野球28年ぶりの完全試合を達成した時の記念球です。米国でも彼の快投は大きな話題となりましたが、まさか本人より先に海を渡り、本場米国の博物館に収蔵されているのには驚きました。

米野球殿堂博物館に飾られている、ロッテ佐々木朗希投手が完全試合を達成した記念ボール
米野球殿堂博物館に飾られている、ロッテ佐々木朗希投手が完全試合を達成した記念ボール

しかし、同博物館で最も目に留まった日本人と言えば、やはりイチロー氏です。3階の偉業及び記録達成コーナーに行くと、メジャー記録の10年連続200安打や年間262安打といった偉業に加えて、マリナーズ時代のユニホームやバットを展示。その他にも、いくつか彼の収蔵品を見ることができました。

米野球殿堂博物館に飾られているイチロー氏の記念品
米野球殿堂博物館に飾られているイチロー氏の記念品

イチロー氏は来年、日本人初の米野球殿堂入りが確実視されています。今や米国では「殿堂入り有資格1年目で選出されるのは確実」とされ、「19年マリアノ・リベラ(ヤンキース)しか達成していない満票選出なるか?」が話題になるほどです。

同館長にイチロー氏の殿堂入りについて聞くと「もう既に準備は始まっている。その件で近々日本に行くつもりだ」と話していました。また「まだ公表はしてないけれども、来年1月21日に殿堂入り選手を発表。7月27日に表彰式典を開催する予定」とのこと。表彰式典に、どのぐらいの来場者が予想されるか尋ねると「過去に一番多かったのが07年にトニー・グウィン(パドレス)とカル・リプケン(オリオールズ)が殿堂入りしたときの約8200人。来年、どのぐらいの人たちが来場するかは想像できない」と言っていました。

米野球殿堂博物館を訪れた福島良一氏。殿堂入り選手の額が飾れている
米野球殿堂博物館を訪れた福島良一氏。殿堂入り選手の額が飾れている

翌日、同博物館に併設した図書館ジアマッティ・リサーチセンターで研究していると、かつてレッドソックスの広報担当だったジョン・シェスタコフスキー副館長が会いに来てくれました。彼から「あなたの10回には及ばないけれど、イチローも8回当博物館を訪れている」と聞いてビックリしました。さすが米国野球に研究熱心なイチロー氏と、改めて感心しました。

来年の表彰式典の来場者数について逆質問され「おそらく大勢の日本人も来るので1万人以上ではないか」と答えました。いずれにせよ、今まで見たこともないような光景になるはずです。

米野球殿堂博物館では殿堂入り選手の額が飾れている。新たな選手も予定されている
米野球殿堂博物館では殿堂入り選手の額が飾れている。新たな選手も予定されている

最後に殿堂表彰者ギャラリーで、来年イチロー氏のレリーフが掲額される場所を確かめました。当館の学芸員に聞くと「毎年レリーフはアルファベット順に掲額。来年はイチロー氏以外にCC・サバシア氏、ビリー・ワグナー氏が有力視されており、名字の順を考えるとこの位置になる」と説明してくれました。

米野球殿堂博物館では殿堂入り選手の額が飾れている
米野球殿堂博物館では殿堂入り選手の額が飾れている

来年はメジャーの日本開幕戦が予定されています。日本人初の殿堂入りが確実視されるイチロー氏のお祝いムードになるでしょう。来年のメジャー日本開幕戦はドジャース-マリナーズ戦を予想します。殿堂入りイチロー氏が始球式を務め、将来殿堂入り候補の大谷が受けるシーンをぜひ見せて欲しいと思います。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

米野球殿堂博物館に飾られている収蔵品の数々
米野球殿堂博物館に飾られている収蔵品の数々