ア・リーグ優勝決定シリーズでアストロズに3連勝し、ワールドシリーズまであと1勝に迫っているレイズ。その躍進に対して注目が集まっているのが、総選手年俸額の低さだ。レイズの今年の総選手年俸は2860万ドルで、30チーム中26番目である。これは地区シリーズで3勝2敗で破ったヤンキースの1億1390万ドルより9000万ドル近くも少ないのだ。さらにレギュラーシーズン40勝は1億550万ドルを支払っているドジャースの43勝に次ぐ成績だった。

レイズの地元、フロリダ州タンパはMLBのフランチャイズ地域の中でも最小の一つに分類され、元々放映権料などで多くの収益が望めず、そのため選手年俸を抑えざる得ないという事情がある。そのため過去5年間でも総選手年俸額のランキングで26位1回、28位2回、29位1回、最下位30位が1回という具合だ。にもかかわらず勝てる戦力をそろえることができているのである。

この成功要因についてケビン・キャッシュ監督はスポーツ専門局ESPNに対し、「(分析と育成)部門とスカウトのおかげだ。共同作業なんだ。選手育成からスカウト、フロントオフィス、コーチングスタッフに至るまで、コミュニケーションや話し合いの量が多い。常に会話があり、あらゆる角度からアイデアを出し合い、リスペクトされている」とチーム全体での取り組みの結果だと明かしている。またスカウトに力を入れることが低予算チームであるレイズにとって「彼らができる唯一の方法なのだ」というライバルチームの首脳の言葉も紹介していた。

ただキャッシュ監督は低年俸で能力が高い選手を見つけるだけではだめだとも強調する。「選手を獲得する際には、その選手がフィールドで何ができるかということと同じくらい、その選手の性格が重要なんだ。そこでスカウトやクチコミからの情報がいる。試合を通して知り合い、関係を持つことで、選手の性格についてかなり重要な情報を見つけることができる。その選手たちがフィールドでどのようにマッチするかについての情報を念入りに調べるのと同じぐらい、クラブハウスでマッチするかどうかが重要なんだ」とチームとの相性を重視しているとした。

実際、2018年にパイレーツからトレードで加入したタイラー・グラスノー投手は「誰もがここでチャンスを与えられているし、ここに来てプレーすることを心から望んでいる。皆が勝利を目指しているから、彼らがやりたいようなラインアップを組むことができるんだと思う」と語り、チームが一丸となっていることを強調している。

そんなレイズはこのまま勢いを維持してワールドシリーズ制覇まで駆け上がることができるだろうか。