【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)6日(日本時間7日)=四竈衛】大谷、最終決断へ-。ポスティング制度でメジャー移籍を目指す日本ハム大谷翔平投手(23)に対し、マリナーズとエンゼルスが緊急トレードを締結し、25歳未満の外国人に支払い可能な契約金枠の大幅アップに成功。最終折衝は予断を許さない状況となってきた。

 大谷側と「2次審査」に残った7球団との直接交渉は、前日までに終えていたことが判明。今週中にも移籍先を決断する可能性が高まってきた。

 大谷争奪戦が、いよいよ佳境を迎えた。「2次審査」に残った各球団は、水面下で着々と二の矢を用意していた。

 まず先手を打ったのが、マリナーズだった。ツインズへ若手有望株のデビッド・バネロスをトレード放出し、25歳未満の外国人に支払う契約金プール枠の約1億円分と交換。大谷への支払可能額を255万7500ドル(約2億9410万円)までアップさせた。5日(同6日)の直接交渉には、殿堂入り候補のエドガー・マルチネス(現打撃コーチ)も同席。並々ならぬ意欲と誠意を見せていた。

 エンゼルスも、駆け込みトレードで「大谷資金」を増額した。ツ軍にジェイコブ・ピアーソンを放出し、同枠を231万5000ドル(約2億6600万円)まで上乗せした。現時点でレンジャーズが353万5000ドル(約4億700万円)の最高額を有する。大谷の判断基準が金銭でないことも把握していながら、マ軍、エ軍ともにアピールを続けた。

 そもそも両球団には居住環境の良さなど、金銭面以外の魅力が多々ある。またマ軍は過去にイチロー、佐々木ら日本人が多数在籍。日本人選手に対する理解という点で優れ、エ軍には日本人の選手が現在在籍しておらず、大谷が加入することであおりを食う日本人がいないということも、後押しになる。金銭面のアピールは、それらに誠意をプラスした形だ。

 4日(同5日)にスタートした直接交渉は、48時間で7球団と面会するハードな日程で行われた。現時点で具体的な内容は明らかになっていないものの、直接交渉を終えた某球団関係者が「彼がどこを選ぶのか、まったく分からない」と話すなど、米球界でも「サスペンス」と表現されるほど異例な形で進んでいる。

 大谷の今後の予定は不明だが、移籍先候補を絞り込み、「最終審査」として本拠地視察を行う可能性を指摘する声もある。もっとも、各球団に対しては、大谷側から最終的な通告時期などについては伝えられていない。大谷と各球団の交渉期限は、22日(同23日午後1時59分)に設定されているものの、いつ決まってもおかしくない状態にある。

 ◆7球団の大谷への契約金上限◆

(1)レンジャーズ 353万5000ドル(約4億700万円)

(2)マリナーズ 255万7500ドル(約2億9410万円)

(3)エンゼルス 231万5000ドル(約2億6600万円)

(4)ドジャース 30万ドル(約3450万円)

(4)カブス 30万ドル(約3450万円)

(4)ジャイアンツ 30万ドル(約3450万円)

(4)パドレス 30万ドル(約3450万円)

 ◆大谷への契約金を増額したエンゼルスとマリナーズの現状◆

 <エンゼルス>

◇投手陣 15年に15勝を挙げたエース右腕リチャーズが右ひじの故障で、今季ほぼ離脱するなど故障者がとても多く、先発陣の総登板イニングは両リーグ22位だった

◇打線 年間MVPに2度輝いた右の強打者トラウト中堅手が、攻撃陣の中心に座る。DHには、年間MVPに3度輝いた37歳のプホルスが、ほぼ固定されている

◇監督 ソーシア監督は、来季19年目で、02、09年にア・リーグ最優秀監督賞を受賞した名将。通算1570勝1346敗

◇球場 オープンエアのエンゼルスタジアムは、この5年間連続で投手有利の球場10位以内。右翼フェンスが非常に高いため、右打者よりも左打者に厳しい球場だ

◇環境 球場周辺は急速に再開発され、住宅やビルの建設ラッシュ。ディズニーランドに近く、富裕層が多く住む地区

 <マリナーズ>

◇投手陣 09年に最多勝利に輝いたエースのヘルナンデスは、30歳をすぎて下降気味。岩隈も故障で来季は出遅れる見通しだ。先発枠2~3は、まだ固まっていない

◇打線 7度オールスター出場のベテランのカノを中心に中堅どころが並ぶ。36歳のクルーズがDHにいるが、大谷が加入ならクルーズを外野手で起用する予定だ

◇監督 現役時代、捕手だったサービス監督は、経験まだ2年で通算164勝160敗。監督としての受賞の経験なし

◇球場 開閉式屋根のあるセーフコフィールドは、投手の有利さでは今季両リーグで8位。海抜が低いことが1つの要因とされ、球場での打者の三振率も高くなっている

◇環境 ダウンタウンに近く、大型の日本食スーパーや和食レストランなどが固まる地区まで徒歩圏内と便利だ