ドジャース大谷翔平投手が今季狙えそうな記録には、意外なものがあります。それは夢の100長打、400塁打。ベーブ・ルース、ジム・ライスを超えられるのか、見どころ満載のシーズンとなりそうです。

3月20日、韓国でのシーズン開幕から1カ月が過ぎました。ドジャース1年目の大谷投手を見て、最も驚くのがアーチストからヒットメーカーへの変身です。シーズン開幕当初はライト方向へ引っ張る打球が多くありました。しかし、最近はセンターやレフトと全方向に打球を打ち分け、ヒットを量産しています。

何しろ、同僚の元ア・リーグ首位打者ムーキー・ベッツと最多安打を争うほど。10年連続200安打を記録したイチローさんをもほうふつとさせます。

それでも、大谷の魅力はホームランです。例年ホームランバッターはエンジンの掛かりが遅いといわれ、今季は開幕から自己ワーストの41打席目で待望の1本が出ると、勢いに乗って2戦連発。これから気温の上昇と共に、ホームランも量産するでしょう。

また、ドジャースで球団最多記録となる初出場から14試合12長打をマーク。特に、メジャー一番乗りで10二塁打を放つなど“長打マシン”と化しています。例えば、一、二塁間を抜けた打球が外野フェンスにまで到達するぐらい速く、シングルヒットを二塁打にする積極果敢な走塁を遺憾なく発揮。昨年球団新記録の59二塁打を放ったフレディ・フリーマンのお株を奪うほどです。

それと本拠地ドジャースタジアムは今の時代にしては珍しい左右対称のグラウンド。外野の左中間、右中間とも膨らみがあり、まるで人工芝のように球足も速く、大谷の俊足を持ってすれば二塁打を三塁打にすることも十分可能です。従って、パワーに加えてスピードを存分に生かした三塁打も増えそうです。

そうなると、今季の大谷にはホームラン王だけでなく、ナ・リーグ最多の二塁打や三塁打も大いに期待したくなります。それによって、最も価値ある「長打」や「塁打」にも注目が集まりそうです。

過去の長い歴史を振り返ると、1921年にヤンキースのベーブ・ルースが打者に専念して2年目のシーズン、ア・リーグ最多の44二塁打、16三塁打、当時メジャー史上最多の59本塁打をマーク。同時にメジャー記録の119長打を放ち、いまだに不滅の記録となっています。

一方で、78年にレッドソックスの主砲ジム・ライスが、リーグ最多の213安打、15三塁打、46本塁打を放ち、驚異の406塁打をマーク。その年ヤンキースで25勝3敗と圧倒的な成績を収めたロン・ギドリーを抑えて、見事MVPに輝くほど最高の評価を受けました。

ちなみに、大谷は21年エンゼルス時代に26二塁打、8三塁打、46本塁打を放ち、自己最多の80長打をマーク。昨年は9月3日時点でほぼ同じ26二塁打、8三塁打、44本塁打という成績でしたが、翌日の試合前に右脇腹を痛めてシーズン終了。もし残り1カ月もプレーしたら100長打、400塁打を達成できたかもしれません。

今シーズン開幕してまだ1カ月ですが、両リーグトップの長打、塁打数をマーク。現時点で100長打どころか、ルースの119長打にも迫る勢い。また400塁打どころか、ライスの406塁打も大幅に上回るペースです。

今後も大谷が最多安打や二塁打、三塁打、ホームラン争いをすれば、自ずと夢の「100長打」や「400塁打」も見えて来るでしょう。今季は打者専念とはいえ、例年以上に見どころ満載のシーズンとなりそうです。

【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)