エンゼルス大谷翔平投手(23)が、イチローが歴史を紡いできた場所で躍動した。マリナーズ戦に先発登板。カーブを多投するなど進化した投球で、7回途中6安打2失点で約1カ月ぶりに3勝目(1敗)を挙げた。

   ◇   ◇   ◇

 大谷は好調マリナーズ打線を翻弄(ほんろう)した。6回2死、相手の4番クルーズに対してカーブが抜けて死球となった。降板した7回の被本塁打と与四球の兆候が、この1球にあった。しかし、全98球のうち11球を占めたカーブが好投の原動力になった。

 代名詞のスプリットが全部で11球だったことからも、カーブに高い比重を置いていたことがうかがえる。最速99・5マイル(約160キロ)で、最も遅いカーブは74マイル(約119キロ)。意識して直球の前後に挟むことで、球速にして約41キロもの緩急を強調した。直球にスピードがある投手にとってカーブは有効な球種で、大谷は身長が高いため落差も大きい。打席で目線を上下にずらされる打者からすれば、特にやっかいなボールとなる。直球、スライダー、スプリットに続く「第4の球種」として、十分に使えるメドが立った。

 マ軍は、大谷がここまで投げてきたデータをもとに、全投球に対する持ち球のパーセンテージを頭に入れて試合に入ったはず。それだけに、立ち上がりの1回に全11球のうち4球も交ぜてきたカーブに面食らったのではないか。事前の情報を逆手に取った捕手リベラのファインプレーで、初めてコンビを組んだにもかかわらず意図を理解し、しっかりとコントロールした大谷も見事。同地区のライバルに対し奥行きのある投球を示したことは、次回以降の対戦を考えても大きい。(日刊スポーツ評論家)