メジャーで花巻東高の同窓対決が実現する。

マリナーズは4勝目を目指す菊池雄星投手が先発。エンゼルス大谷翔平投手は3番DHでスタメン出場となり、NPB時代の2017年開幕戦以来、2年ぶりの対決となる。

岩手県で生まれ育ち、花巻東の先輩、後輩の間柄。ともに甲子園で「怪物」と呼ばれた大谷翔平投手(19=当時日本ハム)と菊池雄星投手(21=当時西武)が、2013年7月の球宴前に行われた対談で過去、現在、未来について、本音を語り合っています。

ともにメジャー移籍を果たし、夢の対決を果たしたが、6年前に2人は何を考えていたのか、復刻版で若き日の熱き想いを振り返る。過去編です。

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【過去 ~今より以前の、過ぎ去った時~】

対談場所は、前半戦の最終戦が行われた函館市内のホテルだった。先に部屋に着き、先輩を待つ大谷の顔はこわばっていた。緊張しているように見えた。開始予定時刻から約10分後、体のケアを終えた菊池が「遅れてすみません」と言いながら、慌てて駆け込んできた。先輩のおちゃめな姿に安心したのか、大谷はうれしそうな笑顔を見せて、立ち上がった。

菊池 (大谷の存在を)知ったのは中3の時。花巻東の練習を見学に来てたんだよね。でも、顔は見られなかった。顔を見たのは高校に入ってからだったね。

大谷 (その時の菊池は)すごかったです。

菊池 ハハハ。ありがとうございます。

大谷 ブルペンに行かせてもらったんですけど、とにかくすごかったです。

3歳年が離れ、同時期には在学しておらず、直接的接点はなかった。だが、この日を境に、運命は交差していった。

大谷 高校時代は、周りからずっと「雄星はこうだったんだぞ」と、言われてきたんです。すごく高い存在でしたし、そうなりたいなとずっと思っていました。

菊池 それって、授業中は寝てたよ、とかじゃない? 特に、語り継がれるようなことは何もしてないんだけど。

大谷 僕は食べるのが得意じゃなくて、量が少なかったので、(菊池は)何杯も食べたと聞いて、やらなきゃいけないなと。(茶わん)13杯食べてたとか、聞くたびに、そういうふうにやらないと大きくなれないと思ってました。

菊池 吐くまで食べたこともあった。経験あるでしょ?

大谷 はい、僕もあります。

菊池 (花巻東の)伝統なんだよね。2週間くらいはきついんだけど、慣れたら平気でしょ。

菊池が初めて、大谷の投球を見たのは、高校1年、夏の県大会・準々決勝だった。オールスター休暇中で観戦に訪れたが、その時の衝撃は今も脳裏に残る。

菊池 テークバックは柔らかいし、球も速いし、手足も長いし、これはすごいと思った。ただその試合がコールド負け…。往復8時間くらいかけて行ったのに、1時間で終わっちゃった(笑い)。大谷は7回から出てきたけど、あまりのすごさに、宝の持ち腐れってみんな言ってたよ。

菊池の絶賛にも、大谷は表情1つ変えず耳を傾ける。

菊池 今話してみても、本当にテレビのままだよね。誰に対してもさわやかだし、結果どうこうじゃなく、しっかりと受け答えするし、常に笑顔で取材を受けてる。そこが、自分との違いかな。嫌なことでも、笑顔で話せるのはさすがだし、人間の器の違いなのかなぁ(笑い)。

大谷 でも僕も、雄星さんの学校での態度だとか、成績もしっかり残されていたと聞いていたので、僕もそうならなきゃいけないと思ってやっていました。

菊池 それにしても、天は二物を与えたなと思うよ。バッティングもいい、足も速い、走塁もいい、球が速い、変化球もキレる、顔もいい。あれ? オレは…。ほんと、不公平だよなぁ(笑い)。やっぱり天性ってあるんだ。(現在編へ続く)