ナ・リーグのサイ・ヤング賞の行方は-。カブスのダルビッシュ有投手(34)が20日(日本時間21日)、ツインズ戦に先発し、7回途中9安打4失点で3敗目(7勝)を喫した。

依然として最有力候補ながらも、防御率は2・22とリーグ7位に後退。残り1試合の最終登板が、投票結果を左右しそうだ。

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7回、ケプラーに喫した2ランが、痛かった。ダルビッシュにすれば、失投ではなく、内角低めへの時速142キロのカットボール。「狙ってたのかな」。降板を告げられただけでなく、この2失点で防御率は2・22まで上昇し、リーグ7位まで下降した。

これまでダルビッシュは、MLB公式サイトの担当記者によるサイ・ヤング賞の予想投票で1位にランクされるなど、最有力候補に挙げられてきた。今季は60試合の短縮シーズンでもあり、当初から激戦は想定内だった。それでも、全米中継したスポーツ専門局「ESPN」でゲスト解説を務めたA・ロドリゲス氏(元ヤンキース)は、試合序盤に「この男しかないでしょう」と、ダルビッシュに太鼓判を押した。

だが、7回の1発で雲行きは怪しくなった。同局でリポーターを務めるベテランのバスター・オニール記者は、ゴルフのメジャー大会の最終日に例え「17番ホールでダブルボギーを打ったようなもの」と痛恨の1発を表現した。今季はハイレベルな戦いとなっており、ナ・リーグの防御率上位3人は1点台。ダルビッシュの場合、残り1試合を7回無失点で2・01、7回2/3無失点で1・99と、2点台を切るためのハードルは高い。

もっとも、勝利数(7=リーグ1位タイ)、奪三振(88=同2位タイ)、投球回数(69=同2位タイ)と、主要部門で上位にランクされており、有力候補の筆頭であることに変わりはない。これらにWHIP(1イニングあたりの許走者=安打+四球)、被打率などの判断基準が加味される。今季の場合、同地区内での対戦に限られ、各担当記者が他地区の投手を見る機会が少ないため、投票が分散する可能性も高い。

いずれにして、ダルビッシュを含め上位投手の最終登板次第。プレーオフ争いだけでなく、サイ・ヤング賞など個人タイトルの行方も、最後まで予断を許さない状況となってきた。

◆WHIP(Walks plus Hits per Innings Pitched) 1イニングあたりに許した走者数(安打と四球のみ。死球や失策などは含まない)。投手の安定度を示す。

◆最近のサイ・ヤング賞の傾向 シーズンで最も活躍した投手に贈られる賞で各リーグ1人ずつ。BBWAA(全米野球記者協会)の記者投票によって選出される。かつては「圧倒的な投球をした投手」のような剛球投手のようなイメージもあったが、近年は細かい成績に基づいて投票される傾向が強くなった。基本的には、勝利数、奪三振、防御率のタイトル項目が大きな基準である一方、チームへの貢献度を意味する投球回数が重視されることも多い。

2010年、ヘルナンデス(マリナーズ)はチームが不振だった中、13勝12敗と勝利数は伸びなかったものの、防御率、投球回数などで1位、奪三振2位の内容が認められて選出された。短期開催の今季の場合、各選手の数値の差が少ないこともあり、票が割れるものとみられている。