ポスティングシステムを申請し、メジャー移籍を目指した巨人菅野智之投手(31)が8日、残留を決めた。複数のメジャー球団と交渉し、日本時間8日午前7時の交渉期限直前まで熟考を重ねた中で決断。夢であるメジャー移籍へと心は揺れ動いたが、巨人のエースとしての矜持から信念は曲げず、1年契約で巨人で勝負する意向を固めた。東京五輪での金メダル、リーグ3連覇と初の日本一を目標に設定。今季中に海外FA権を取得する見込みで、シーズン後に再び夢への挑戦を自らの心に問い掛ける。

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熟考の末、巨人残留を決断した菅野は来オフあらためて移籍を目指す可能性があるが、21年オフのFA市場はサイ・ヤング賞クラスの超大物投手がズラリと並び、激動する可能性がある。

手術明けのバーランダー(39=アストロズ)生え抜きのカーショー(34=ドジャース)は残留濃厚とみられる一方、グリンキー(38=アストロズ)シャーザー(37=ナショナルズ)クエト(36=ジャイアンツ)らが移籍すれば、各球団の勢力図が変わるため、市場の動きは一気に加速する。超大物とはいえ30代後半のベテラン陣に長期契約は難しく、早い時期に決着することも予想され、活発に動く期待値は高い。

32歳となる菅野の場合、ストローマン(30=メッツ)ガウスマン(31=ジャイアンツ)らと同グループに入る見込みで、ベテランエースが不在となる球団を主体に、有力先発陣を補強する流れが生まれそうだ。

懸念があるとすれば、オーナー陣と選手会の間で行われる新労使協定の交渉。コロナ禍の影響で緊縮財政を強いられるオーナー側に対し、条件闘争で譲歩しない選手会の話し合いが紛糾することは確実視されており、長期化した場合、市場への動きに影響を及ぼす危険性は捨て切れない。今季の公式戦が予定通り実施されたとしても、無観客であれば、球界経済の冷え込みは続くだろう。

もっとも、来オフは譲渡金が発生するポスティングでなく、FAでの挑戦となるだけに、菅野にとって少なくともプラス材料となることを期待したい。【MLB担当=四竈衛】

(注)各選手の年齢は、いずれも来オフのFA時。