エンゼルス大谷翔平(26)が、メジャーで初の“リアル二刀流”に挑む。

21日午後1時10分(日本時間22日午前5時10分)開始のパドレス戦に、「1番投手」で出場すると、球団が発表した。

日本では日本ハム時代の16年7月3日ソフトバンク戦に「1番投手」で出場。1回の第1打席に初球を右中間席へたたき込み、プロ野球史上初となる投手の先頭打者アーチを決めた。投げても8回を5安打10奪三振の好投で無失点に抑え、勝利投手となった。果たしてメジャーでもこの日の再現なるか-。

衝撃の1戦を投打2本建てで報じた記事を復刻します。(所属、年齢など当時)

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<ソフトバンク0-2日本ハム>◇2016年7月3日◇ヤフオクドーム

【打者大谷】

マンガでも、出来すぎのストーリーだ。日本ハム大谷翔平投手(21)が、ソフトバンク14回戦(ヤフオクドーム)で、プロ野球史上初となる投手の先頭打者アーチを放った。常識破りの「1番投手」で出場すると、1回の第1打席に初球を右中間席へたたき込んだ。2年ぶりの2ケタ本塁打となる10号ソロで自らを援護すると、投げても8回5安打10奪三振で無失点に抑え、8勝目を挙げた。大谷のリアル二刀流の活躍で、チームは10連勝となり2位に浮上した。

大谷が常識をぶち破った。1回。まっさらな打席に足を踏み入れ、初球、124キロのスライダーを迷いなく振り抜いた。「打った瞬間にいくとは思いました」。右中間席へ、野球人生初めての初球先頭打者本塁打。「1番投手」で出場する歴史的な一戦で、いきなり決勝アーチを放ってみせた。興奮と感動を届ける衝撃的なストーリーを、ひとりで完結させた。

前日2日に栗山監督から告げられた。「びっくりしました」。1番打者での出場は13年5月6日の西武戦で経験しているが、投手としての1番打者は、アマ時代を含めても初めて。この日、選手食堂に張り出されたスタメン表を見て、チーム内も騒然としたという。高橋捕手コーチ兼打撃コーチ補佐は「2度見、3度見ですよ」。杉谷も「7度見くらいしました」と、舞台裏を明かした。

スタメン発表でスタンドはざわめいた。現代野球の常識からは離れた起用法だったが栗山監督の意図はそこにあった。「1番投手」は71年に故・外山義明が出場した記録が残る。仕掛けたのは誰も思いつかない戦術が「三原マジック」と呼ばれた知将、故・三原脩だった。

同氏を尊敬し、オフには墓参を欠かさない栗山監督の頭に前例は入っていた。単にまねただけではない。三原氏の教えで最も大切にしているのは「先入観をなくしなさい」。最も打席が多く回る1番に投手を置くことは、本当にナンセンスなのか。同監督は試合後、「一番いい打者にたくさん打席が回る」と言った。陽岱鋼が負傷でベンチスタートも要因の1つだが、万人が深く考えず「常識」ととらえている時流に、根拠と信念を持ってぶつかった。

大谷も言った。「5番だったら(初回に)回ってくるか分からないし、1人出たら準備もしなくてはいけない。(1番は)最初から先頭ということでやりにくくはなかった」。4年目を迎える二刀流への挑戦も、もともと「常識」にとらわれない発想と信念があったからこそ。当初は渦巻いていた批判や疑問も、豊かな才能と努力で消えつつある。投げては自身7連勝でチームは10連勝。大谷は「ここで3つ勝った。ウチからしたらすごく大きいと思います」。奇跡の逆転リーグ制覇も、不可能な難題だとは思わない。【本間翼】

 

【投手大谷】

もちろん投げてもすごいんです! 日本ハム大谷翔平投手(21)は、自らのバットで奪った先制点を守った。強力ソフトバンク打線を8回5安打10奪三振の好投で無失点に抑え、自身7連勝となる8勝目を挙げた。チームは10連勝で2位に浮上。打って、投げて…。大谷の飛躍はとどまるところを知らない。

先頭弾の援護を受けてマウンドに上がった大谷は、最速161キロの速球とスライダーを軸に、強力ソフトバンク打線をねじ伏せた。8回5安打10奪三振で、自身7連勝となる8勝目。チームの連勝も10に伸ばし「(今カード1、2戦目の)高梨さんも有原さんもいい投球をしてくれていた。何とか続きたいと思っていました」。5度打席に立ち、120球を投げたが、疲れも見せずに振り返った。

選手食堂に張られたスタメン表を見て、唯一驚かなかったのが大谷だ。当然だ。騒然とするチーム内の雰囲気を楽しむように、普段通りに遠投を行い、ブルペンで準備を進めた。

「1番投手」の先人、故外山氏のことは知らない。頭を占めているのは、「どこからでも点が取れる強いチーム」という、相手打線のことだけ。1回は2死から柳田、内川に連打を浴びて一、二塁のピンチを招いた。2~4回も、立て続けに得点圏に走者を背負った。それでも「自分で打って得点していたし、最少失点でいければいいかなと思った」。要所ではギアを上げ、本塁にはふたをした。

チームの10連勝は6月19日の中日戦(ナゴヤドーム)から始まった。この試合を8回2安打無失点で勝ち投手になったのは大谷だった。同26日のオリックス戦(京セラドーム大阪)も7回3安打無失点で勝利を収めた。何度バトンが巡ってきても、きっちり白星でチームメートに託す。個人的にも、連続イニング無失点は「30」まで伸びた。打者・大谷、そして投手・大谷がいる限り、やっぱり奇跡の逆転リーグ制覇は不可能な難題だとは思えない。【本間翼】