現実世界を超えた、驚異の男だ。エンゼルス大谷翔平投手(26)が打って投げて守って、“リアル三刀流”でフル稼働した。11日(日本時間12日)のアストロズ戦に、投打のリアル二刀流の「2番投手」で出場し、7回4安打1失点。18年5月13日以来の2ケタ奪三振となる10三振をマークし、06年ドジャース斎藤隆に次ぐスピードでメジャー通算100奪三振に到達した。打っては4打数1安打。8回裏には右翼の守備にもつき、1試合で三役の活躍。チームは完敗したが、周囲を驚かせる才能を見せつけた。

   ◇   ◇   ◇

ゲームの世界のように、大谷が敵地のフィールドを駆け回った。先発で7回、88球を投げ抜いて交代。だが、それで終わらない。8回裏、外野手用のグラブを手に右翼へ走った。1死一塁からは右前への安打を無難に処理。「打者→投手→野手」とメジャーでは自身初の1試合三役に「楽しかったです」とすがすがしい表情で振り返った。

“リアル三刀流”のショータイムは快投劇から始まった。最速99マイル(約159・3キロ)の直球、スプリットに加え、69・7マイル(約112・1キロ)のスローカーブで10奪三振。最大47キロ差の緩急を使った。「イメージ通り、各球種、精度良く投げられた」と納得の今季ベスト投球。鋭角に曲がるスライダーの精度も抜群で「体めがけて投げる球もいいところに曲がっていた」。右打者をのけぞらせてからストライクとし、実況アナウンサーが「プレイステーションのゲームだ」と例えるほどのキレ味だった。

それでも、試合前は違和感があった。「ちょっと体が重いかな」。今季は全試合に出場し、中5日での登板だったが「疲れというより時差とか、そういう感じのだるさ」。2日前、カリフォルニア州から2時間の時差があるテキサス州への移動で体内リズムが狂った。これが好転し、「効率よく投げられましたし、元気でガチャガチャ投げるより、ある程度まとまってたと思います」と、自然と力みが消えた。

快投を続け、1点を争う投手戦となった。マドン監督は7回に安打を放った大谷を9回の打席に立たせるため、8回から右翼で起用。だが、リリーフ陣の4失点が大誤算だった。大谷は7回88球で余力があったが、「継投うんぬんは監督の仕事なので、僕は何も言うところではないですし、任されたところをしっかり抑える」と冷静に受け止めた。身体能力の高さを改めて証明した三刀流。試合には負けたが、大谷が間違いなくゲームの主役だった。【斎藤庸裕】

▼大谷が投打二刀流に加え外野守備までこなしたのは、日本ハム時代に2度ある。プロ入り後初めて投打二刀流で出場した13年6月18日広島戦(マツダスタジアム)では「5番投手」でスタメン出場し、降板後の5回から右翼を守った。同8月18日ソフトバンク戦(帯広)では、「5番右翼」でスタメン出場。8回に4番手で登板した。

▼大谷が4回、アルバレスから奪った三振で大リーグ通算100奪三振に到達。75回1/3での到達は日本人投手で斎藤隆(75回)に次ぐ2位。先発投手では野茂英雄(77回)を上回る最速となった。

▼大谷の2桁奪三振は大リーグ移籍後、18年4月8日アスレチックス戦(12個)同5月13日ツインズ戦(11個)に次いで3度目。投打同時出場の試合では初めてマークした。