【デンバー(米コロラド州)12日(日本時間13日)=四竈衛】日本人で初めてメジャーのホームランダービーに出場した第1シードのエンゼルス大谷翔平投手(27)が、激戦の末、ナショナルズのホアン・ソト外野手(22)に敗れ、1回戦で敗れた。

再延長までもつれ込む接戦の末、惜敗したものの、本塁打王争いで首位を快走する大谷が、あらためて人気の高さと存在感を示すイベントとなった。

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勝負が決着した直後、一塁側へ振り返った大谷は、熱戦を繰り広げたソトに近寄り、笑顔でハグを交わした。正規の対決では、計4分間(ボーナスタイムを含む)でともに22本を放ち、1分間のタイブレークへ突入。ここでも互いに6本を加え、最後は3スイングの再延長へもつれ込んだ。ナ・リーグの本拠地ながら、ほとんどの声援が大谷びいきで、心強い後押しも受けた。だが、全3スイングですべて柵越えを放ったソトに対し、大谷は初スイングでゴロ。「もう、僕はいっぱいいっぱいでした。なかなか打てないだろうとは思ってました」。

休憩時間には、花巻東高の先輩マリナーズ菊池、エ軍の同僚ウォルシュに「給水」のサポートを受け、仕切り直した。だが、ソトに追い付いても、逆転することはできなかった。「もう疲れていたので(歓声は)それどころじゃなかったですけど、まあ、終わってみれば楽しかったです」。

第1ラウンドで敗退したとはいえ、最長513フィート(約156・4メートル)弾をはじめ、500フィート(約152・4メートル)超え6本は出場8選手中最多。打球速度も上位4位までを独占した。今季は、疲労軽減などの目的で開幕戦以来、グラウンド上でフリー打撃は行っておらず、最初は戸惑いもあった。「1日にあれほど振ることはないんで。(外で)やってないので、なかなか距離感が取れないという感じでした。ホームランダービーだけで、あれだけ(観客が)入ることは日本ではないですし、こうやって1日かけてやるということはないですけど、なかなかできる経験ではないので、すごく楽しかったです」。

初出場は初戦敗退したものの、来季以降も挑戦できる可能性はある。「それは、選ばれないと…」。勝ち負けにこだわったわけではない。純粋な“野球小僧”の表情は、初めて経験する夢舞台を満喫した充実感に満ちていた。

▽楽天石井GM兼監督(YouTubeで大谷のホームラン競争を見て) すごい飛んでましたね! クアーズフィールドはすごく飛ぶんですよ。3階席くらいまで飛んでましたね。

▽ナ・リーグのロバーツ監督(球宴での投打同時出場に) このようなことが起きるとは思わなかった。ファンは彼が投げて打つ姿を見たいと思っている。

▽16年MVPブライアント内野手(カブス) 彼が成し遂げていることは畏怖の念を抱かせる。球界にとって非常に素晴らしいこと。そして、彼の祖国も誇りに思っているはずだ。

▽昨季サイ・ヤング賞のビーバー投手(インディアンス) 人だかりができているところを探せば彼を見つけられる」

球宴初選出のターナー内野手(ナショナルズ)「他の選手に悪気はないが、MVPは決まったようなものだよ。

<ホームランダービー記録>(飛距離、打球速度のデータは全てスタットキャストが導入された16年以降)

◆大谷の500フィート(約152メートル)越え6本は史上最多。今大会では計15本の500フィート超え(他にアロンソとソトが4本、ストーリーが1本)が出たが、過去に計測されたのは17年ジャッジの4本だけ。

◆大谷の28本の平均飛距離は465フィート(約142メートル)で、アロンソが決勝で記録した平均464フィート(約141メートル)を上回り史上最長。

◆今大会では計309本塁打が飛び出し、打球速度の最速は大谷とアロンソの117マイル(約188キロ)。平均では大谷が110・9マイル(約178・5キロ)となり今大会最速。

◆ソトが大会史上最長の520フィート(約158メートル)を記録。今大会では4人が歴代上位5本に入った。

◆アロンソが2大会連続優勝。連覇を達成したのはケン・グリフィー(98、99年)ヨエニス・セスペデス(13、14年)に続き史上3人目。

◆アロンソが1回戦で記録した35本塁打は、初戦では史上最多。全体では19年の準決勝で対戦したゲレロ(40本)とピダーソン(39本)に次ぐ3位。