イチロー以来の劇的弾に酔いしれた。パイレーツ筒香嘉智外野手(29)が29日(日本時間30日)、日本選手2人目の逆転サヨナラ本塁打で試合を決めた。カージナルス戦に「6番右翼」で先発出場し、1-3と2点を追う9回、右翼席後方の通路で弾む豪快な5号3ランを運んだ。パ軍移籍後は13試合で打率3割3分3厘、11打点、9安打中8本が長打。新天地でスラッガーの本能を呼び覚まし、アーチ量産態勢に入った。 

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解説 本来の長打力を発揮し始めた筒香が来季以降、メジャー契約を勝ち取る可能性は確実に膨らんできた。移籍前時点の実績では、FAとなっても、来春キャンプでは招待選手、もしくはマイナー契約しか期待できなかった。

パ軍移籍後は31打席で5本塁打を放っただけでなく、OPSは驚異の1・424。サンプル数が少ないとはいえ、メジャートップのハーパー(フィリーズ)が1・003、41本塁打のエンゼルス大谷でも同4位の0・986だけに、筒香の攻撃力が突出しているのは言うまでもない。

近年は特にデータ重視のGMが多く、OPSの高さは重要なアピールポイントになる。さらに、これまでの左翼、三塁、一塁に加え、パ軍では右翼にも就いた。複数ポジションを守る長距離砲は極めて少ないため、貴重な存在だ。

長期の大型契約は難しいものの、単年契約で基本年俸を抑えても、インセンティブ(出来高払い)を細かく設定する内容なら、複数球団が興味を示すことは間違いない。【MLB担当=四竈衛】

 

◆OPS 出塁率+長打率で算出し、打者の総合的な攻撃力を表す新指標。チーム得点との相関が強く、平均は0・71前後、0・9以上で一流、1・0以上で超一流とされる。メジャー記録は04年バリー・ボンズ(ジャイアンツ)の1・422。