<解説>今オフのメジャーのFA市場で、広島鈴木誠也外野手(27)が最も注目されている1人であることは間違いない。

NPBで実績を残し、五輪でも侍ジャパンの主砲として金メダルに貢献した27歳。打率3割1分7厘、38本塁打の数字だけでなく、外野手としてトップクラスの守備力と走力を兼ね備えた実力への評価は、かつての松井秀喜氏に匹敵する。

これまで常に日本人選手が所属したマリナーズは、FAとなった菊池が退団濃厚となる一方、ディポトGMが「日本人選手不在で開幕する選択はない」と言い切るほど、積極的に日本市場への調査を進めてきた。来季は01年以来のポストシーズン進出に照準を定めており、左翼の定位置と中軸を担う打者として、本格的に参戦することが確実視される。シーズン途中、大砲の右翼ギャロを放出したレンジャーズも、争奪戦に加わることは確実。このほか、ダルビッシュが所属するパドレス、悲願の世界一を目指すレイズ、チーム再建に取り組むカブスが、鈴木誠の身辺調査を本格的に進めている。

今オフのFA市場は、先発投手にシャーザー、カーショー(ともにドジャース)、遊撃手にコレア(アストロズ)、シーガー(ドジャース)ら大物選手が多い一方で、外野手は売り手市場。カステヤノス(レッズ)、シュワバー(レッドソックス)らの行方にかかわらず、鈴木誠に投資する球団があっても不思議ではない。

今年12月1日、機構と選手会との労使協定が失効するため、双方が合意しない限り、FAを含めた交渉が停滞するケースも想定される。だが、鈴木誠側が望む環境と条件が整い次第、早期決着する方向へ進む可能性もあるだけに、ポスティング申請のタイミングが重要となりそうだ。【MLB担当=四竈衛】

◆カブス 7月にピダーソンンを放出し、外野はヘイワード、オルテガ、ハップが守る見込み。23年まで契約が残っているヘイワードは今季打率2割1分4厘、8本塁打と不振。

◆パドレス 正左翼手のファムがFAとなり、外野手の獲得に乗り出すことはほぼ確実。中堅は15本塁打のグリシャム、右翼は17本塁打のマイヤーズが務める見込み。

◆マリナーズ 今季39本塁打のハニガーが右翼、昨季新人王のルイスが中堅を守る予定だが、ルイスは今季手術した右膝の状態が懸念される。左翼は若手が起用される見込み。

◆レイズ 中堅は名手キーアマイヤーが務め、右翼と左翼は今季の新人王アロザレーナ、106打点のメドーズ、フィリップス、マーゴーが併用された。

◆レンジャーズ 右翼手ギャロの放出などにより、主に中堅を守ったJ・ガルシア(元巨人)以外は未定。マイナーにもメジャーレベルの有望株がいないため、補強が急務。