候補資格1年目で米野球殿堂入りが決まったデービッド・オルティス氏(46)は、日本人にもなじみがあるだろう。レッドソックスで長年活躍し、07年には松坂大輔投手とともにワールドシリーズ(WS)優勝。13年は打率6割8分8厘、2本塁打、6打点とシリーズMVPに輝く活躍で、上原浩治投手とともに世界一になった。同年は上原を肩に担ぎ上げる勝利の儀式が話題となった。愛称は「大きな父」を意味する「ビッグ・パピ」。好機に強い打撃に似合っていた。本塁打を打つと両手の人さし指で天を仰いだが、神と02年に亡くなった母への感謝を示していたという。

11年には優れた慈善活動を表彰する「ロベルト・クレメンテ賞」に輝くなど、人柄も評価されている。故郷のドミニカ共和国や米国でハイチの子ども向けに基金を設立。医療行為の援助を行った。ドミニカ共和国内で初となる心血管系小児科施設の設立も手伝った。08年6月にはユニセフ(国連児童基金)からも人道的活動を表彰されている。

オルティスの選出は、いろいろな面で注目されている。主に指名打者(DH)を務めた打者は、首位打者2度、打点王1度で「史上最高のDH」と呼ばれた元マリナーズのエドガー・マルティネス氏(通算309本塁打、1261打点)でさえ、資格候補10年目と選出が最終年にまでずれこんだ。「守備の貢献度が足りない」という価値観があったためだが、オルティの通算成績(MLB歴代17位の541本塁打、同23位の1768打点)は、この見解を封じる圧倒的なものだった。

また、薬物時代を生き抜いたことも耳目を集めている。09年2月に「現在の球界がクリーンであると証明したいならランダムではなく、全球団全選手に年3、4回薬物検査を受けることを義務化して、陽性反応が出たら1年間出場停止にした方がわかりやすい」と持論を展開した。同年7月には「03年のドーピング検査で陽性反応だった」と報道されたが、「栄養補助食品やビタミン剤を不用意に摂取した時期があったが、ステロイドを買ったり使ったことは1度もない」と疑惑を全面否定している。薬物検査が厳格化された05年以降にも安定した成績を残し、ドーピングには反対する姿勢を示している。

ちなみに、引退した16年には38本塁打を放っている。現役最終年の選手としては、現在も史上最多のシーズン本塁打数となっている。