MLBはロックアウトが続いている。分かりにくい今回の論争を「MLB労使紛争の争点を探る」と題し、ニッカンスポーツコムで紹介する。最終第5回は「タンキング防止のドラフトくじ」について。

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近年のメジャーリーグで問題視されているのが「タンキング(tanking)」と呼ばれる行為だ。球団が積極的に補強を行わないことなどで戦力を落として勝率を下げ、翌年のドラフトでの上位指名権を狙う戦術を指す。ドラフトは日本のように1巡目選択が入札&くじ引きではなく、基本的に勝率が低い球団からのウエーバー順となる。

前半で上位が狙えそうになくなったチームは、トレードなどで戦力を放出する。このため、優勝を狙う球団と狙わない球団が、近年は2極化している。また、クオリファイイングオファー(QO)を辞退してフリーエージェント(FA)となった優秀な選手が他球団と契約した場合に、補償としてドラフト指名権を与えられる。

16年にはカブス、17年にはアストロズがワールドシリーズを制した。カブスは10年から5年連続5位。13年にクリス・ブライアント内野手を全体2位で指名した。アストロズは11年から3年連続100敗以上を喫し、12年から3年連続でドラフト全体1位(12年はカルロス・コレア内野手)の指名権を得ていた。

タンキング防止へ、指名順にくじを導入することが検討されている。勝率が低い球団の中で抽選を行うのだが、くじへの参加球団数をオーナ側は3、選手会側は8を主張している模様だ。選手にQOを辞退された球団へのドラフト指名権付与の撤廃は、両者の合意がなされている。

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日刊スポーツのMLB担当記者が「タンキング防止のドラフトくじ」について話し合った。

記者A「今のMLBのドラフトは一番負けた球団がナンバーワンの有望株を獲得できるというシステムになっているので、最近はタンキング争いが激化しているようにも見えましたね」

記者B「くじになるのはいいのかもしれませんが、オーナー側が提案している3球団参加制では、あまりタンキング防止効果がない気がしますね。1番負ければドラフト全体3位指名までは保証されるわけですからね」

記者C「選手会もそう感じているので、8球団参加方式を主張しているわけですよね。3球団参加のくじでは何も変わらないと」

記者A「ただMLBは上位3位までのくじに参加できるのは2年連続までと制限する案も出しているようです」

記者B「選手会側は、タンキング防止のため、資金力の乏しい球団がポストシーズンに進出した場合にドラフト上位指名権を与える案も提案しているようですね」

【特別取材班】(おわり)