【アナハイム(米カリフォルニア州)7日(日本時間8日)=斎藤庸裕】エンゼルスがジョー・マドン監督(68)の電撃解任に踏み切った。チームは6日までに12連敗。8年ぶりのプレーオフ進出を目指すため、ミナシアンGMが解任を通告した。三塁コーチだったフィル・ネビン氏(51)が監督代行を務めた初戦は延長戦の末に敗れ、泥沼の13連敗。同一シーズンの球団ワースト記録を更新した。突然の名将解任劇は、果たして風向きを変えるのか。チームへの影響を検証した。

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どこか、しっくりこない会見だった。ミナシアンGMは「つらい日になった。今朝起きて、これが正しい判断だと感じた」とマドン監督解任の経緯を説明した。現在の心境を問われ、言葉に詰まる場面もあった。「落胆している。私は彼が非常に好きだった」。監督としてだけでなく、人間性も好んでいた。ではなぜ、カリスマ性と求心力のある名将を解任する必要があったのか。「変化が必要だと感じた」と繰り返し、具体的な回答はなかった。

複数の米メディアは球団フロントとマドン監督との間に方向性の違いがあったことを報じた。膨大な情報を分析し、データに基づいた野球が現在の主流。一方でマドン監督は、四球からの出塁や走塁を絡めた小技で1点を取りにいくスモール・ベースボールも好み、「どちらかに偏ってはいけない」とバランスを保ってきた。流行や常識にとらわれないスタイルは、投打の二刀流で固定概念を覆してきた大谷とも、うまく調和した。

本塁打を打てる長打力もあり、四球を多くとれる大谷を上位打線で起用。登板日の前後の休養日を撤廃し、DH解除のリアル二刀流が実現したのも、マドン監督の手腕が大きかった。密な対話を重ねた結果で、データや数字だけでは成し遂げられない、人と人が生んだ功績だった。ネビン監督代行の下での起用法について、ミナシアンGMは「現時点で、ショウヘイをどう使っていくかについて、変えることはない」と、これまで通りの方針を示した。だが、今季からチームに加入したネビン監督代行と大谷がいかに歩調を合わせるか。不透明な点も多い。

マドン体制の3年目、道半ばでの電撃解任。同GMは「彼の責任ではない。全員に責任がある」としながら、「我々は今、勝つことが必要な位置にいる」と話した。5月15日の時点で貯金は最大11あった。ここ数年、シーズン序盤は好調でも、故障者や投手陣の崩壊で失速を繰り返してきたエンゼルス。連敗が続き、新しい風を取り込むタイミングだったかもしれない。だが、信頼されていた名将を突然失ったことで、精神的なダメージも否めない。疑問が残る、不可解な解任劇と言わざるを得ない。

◆フィル・ネビン 1971年1月19日、米カリフォルニア州生まれ。エルドラド高でドジャースのドラフト3巡目指名を拒否。カリフォルニア州立大フラートン校から92年ドラフト全体1位でアストロズ入団。95年メジャーデビュー。同年タイガースを皮切りにエンゼルス-パドレス-レンジャーズ-カブス-ツインズへ移籍。通算1217試合で1131安打208本塁打743打点、打率2割7分。内野手、外野手、捕手を経験。独立リーグ、マイナーなどの監督をへて17年からジャイアンツ、ヤンキースでコーチを歴任。今季からエンゼルス加入。