104年ぶりに2桁勝利、2桁本塁打を記録したエンゼルス大谷翔平投手(28)の投球フォームを、日刊スポーツ評論家の佐々木主浩氏(54)がチェックしました。今季はセットポジション時のグラブの位置を昨季より下げましたが、バランスの取れたフォームは健在。終盤戦の活躍にも太鼓判を押しました。

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基本的には昨年から変化は小さいが、(1)のセットポジションに入った時のグラブの位置は変わった。昨季は首の前あたりに置いていたが、ベルト付近に下げている。バランスの問題や癖対策かもしれないが、(2)では今年は左足の爪先が上を向いている。これは、腹筋を使うというより、反動をつけてグラブと左足を上げていることの表れと感じる。日本より硬いメジャーのマウンドでは、この形だと膝に疲れがたまりやすくなるので、注意が必要だろう。

(3)→(4)で本塁側へ体重移動が始まるが、軸足の右足にしっかり体重が乗っていてバランスがいい。内転筋を使って内側に力がたまっている。(4)(5)では、下半身は踏み出しているが、上半身はしっかり体の開きが抑えられている。きちんと上半身と下半身の「割れ」ができていて、かかとから踏み出して、スムーズな体重移動ができている。

(6)から(7)での胸の張りや肘の角度も素晴らしい。(8)→(9)で若干、腰が上がってきているが、この程度であれば許容範囲といえる。マウンドの硬さや体調に適応させようとしているのだろう。上下動は制球の乱れにつながるケースはあるが、今季は与四球率も低く、制球を乱す場面が非常に少ない。股がしっかり左右に割れており、下半身が強い証拠といえる。

(9)でリリースを迎える。今季はスライダーを投げる際に腕を下げることもあるが、この連続写真は直球ということもあり、高い位置までボールを持ってきている。体の前、より打者に近いところでボールを離せており、下半身で生み出したエネルギーをしっかりと指先まで伝えられている。

下半身主導で右足から左足へと体重移動ができており、(10)→(12)のフィニッシュは左足にしっかり体重が乗っている。投げ終わりで右腕が背中側まで回っていないが、三塁側へ左足をクロスして投げると、こうなるケースは多い。正面からの写真を見ないと分からないが、今年は若干インステップ気味と感じる。こうした投げ方は、膝に疲労がたまると右打者の外角を狙った直球がシュート回転しがちなので注意したい。

昨年よりも投球全体のバランスは取れている。エンゼルスは19日から13連戦が控える。大谷は、今季は出場機会が増えて、負担は大きい。下半身の疲労蓄積に気をつけて故障しなければ、今後も安定した成績も残せるはずだ。(日刊スポーツ評論家)