【シアトル(ワシントン州)26日(日本時間27日)=水次祥子】マリナーズの球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(48)が、球団殿堂入りセレモニー前日の会見でこれまでの野球人生や現在を語った。通算3089安打を放ち数々の記録や賞を手にしてきたレジェンドが「想像していなかった」と、日本選手初の球団殿堂入りの重みをかみしめた。

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マリナーズで14年、メジャーで19年プレーし続け、数々の記録や賞を手にしてきた。それでもイチロー氏は「生きていたら何が起こるか分からないということですね。誰も想像していなかったですし、僕自身も」と大きな栄誉に、謙虚に感謝した。

球団殿堂入りセレモニーを翌日に控え、会見でメジャーでの野球人生を振り返った。チームが長く低迷した時期でも変わらない姿勢で野球に取り組み続け、それによって孤立したこともあった。「心折れそうになったときも何度もありますよ。そこで踏ん張ってよかったと思います。あのときはすごく孤独だったけど、向き合ってよかったです」としみじみ話した。

今は指導者として球団を支えている。自ら進んで打撃投手を務め、この日もチームの練習中には外野でフライを受けた。自らも動くことがイチ流指導のモットー。「自分が一緒にプレーして何かを伝えると、伝わり方がまったく違うと思う。僕が動くことをやめてしまったら、体からあふれるエネルギーがなくなっていく。選手にプラスになるエネルギーを(キープしたい)」という。そんなアクティブなイチロー氏に、まだ現役でいたいという気持ちがあるか、質問が飛んだ。「(19年の)東京ドームでの最後、これ以上ない終わり方をさせてもらったので、そういう気持ちが一切起きない。終わり方ってすごく大事だと思いますね」ときっぱり。「ケージの中で選手たちと戦うチャンスはあると思いますし、それで楽しんでいます」と笑った。

◆マリナーズ球団殿堂 球団に貢献した選手やスタッフらをたたえるため、1997年に創設された。Tモバイルパーク内にある。殿堂入りメンバーはアルビン・デービス氏、デーブ・ニーハウス氏、ジェイ・ビューナー氏、エドガー・マルティネス氏、ランディ・ジョンソン氏、ダン・ウィルソン氏、ケン・グリフィー・ジュニア氏、ルー・ピネラ氏、ジェイミー・モイヤー氏、イチロー氏の10人。

○…26日(日本時間27日)からの週末3日間はイチロー氏の球団殿堂入りを祝う行事がめじろ押しとなっている。始球式はゆかりの人物がそれぞれ務め、イチロー氏が捕手に。初日のこの日は、10年7月にイチロー氏が飛球を追ってスタンドに突っ込んだ際、「イチローにタッチした」と大興奮で喜んで話題となったアイリス・スキナーさん(当時17歳)が登場。試合後にはイチロー氏が自ら構成を考えたという花火大会が開催された。