【解説】全米野球記者協会による投票結果は予想通り、1位、2位票ともジャッジと大谷だけの一騎打ちとなった。3冠王に迫る成績を残したジャッジに対し、大谷は34本塁打と15勝。いずれも「歴史的」な業績とあって、数字だけでは甲乙を付けられない「異種格闘技」のような領域だった。

そこでクローズアップされたのが、チーム成績とMVPのVを意味する「valuable(価値がある)」の解釈だった。重圧のかかる優勝争いの中、新記録に挑んだジャッジと、ポストシーズン争いから脱落した大谷の相違点を探すとすれば、チームを勝利に導く「価値」を比較するしかない。

99勝で地区優勝を飾ったヤンキースに対し、エンゼルスは73勝89敗と大きく負け越して地区3位。その結果、1位票はジャッジの28票に対して大谷は2票のみと、意外な差につながった。もし、エ軍が終盤戦まで優勝争いに加わっていれば、僅差になっていた可能性はある。一方で、エ軍担当の記者2人が大谷に投票したことは、決して身びいきだけでなく、二刀流で結果を残す難易度の高さをつぶさに目にしてきたからに違いない。

来季以降、大谷が今季と同じような成績を残した場合、他の選手がジャッジのように歴史を刻む記録を残さない限り、大谷の優位は動かないだろう。ある意味で、今年は特別な1年。ただ、21年のインパクトがあまりに強烈で、周囲が二刀流に「慣れ」てきた空気もあり、投打ともにハードルは上がるはず。特に、米国には依然として本塁打重視の傾向があるため、2桁勝利に加え、40本塁打が「当確」の目安になるのではないだろうか。【MLB担当=四竈衛】