【テンピ(米アリゾナ州)6日(日本時間7日)=四竈衛】WBC制覇へ、大谷がスピードアップにも着手した。

エンゼルス大谷翔平投手(28)が同地のキャンプ施設で自主トレを行い、精力的に走力強化メニューへ取り組んだ。最新機器を駆使し、細かい数値を確認しながら猛ダッシュを反復。投打の「二刀流」だけでなく、WBCの侍ジャパンでは強靱(きょうじん)な「脚力」でも貢献する姿勢を示した。

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過去数年の自主トレではお目にかかれない光景だった。澄み切った真っ青な空の下、黒いトレーニングウエア姿の大谷は、フィールドに姿を見せると、自ら計測装置を設置し始めた。その後は、適度なインターバルを置きながら塁間ほどの距離を全力ダッシュ。黙々と走り終えるたびにスタッフとデータを確認するなど、走塁への意識の高さをうかがわせた。

侍ジャパンの栗山監督がイメージするのは、投手力主体の接戦。史上最強と言われる布陣で挑むとはいえ、米国、ドミニカ共和国ら強豪国相手にアーチ合戦では勝ち目は薄い。限られたチャンスに日本のお家芸でもある機動力を絡め、着実に得点するのが理想。打者として1~2番の打順が予想される大谷にとって、得点源の大砲としてだけでなく、中軸候補の吉田、村上らへの「つなぎ役」も担うからこそ、走塁面の調整は重要なテーマだった。

昨季の大谷は、投打の「二刀流」でハイレベルな数字を残したものの、盗塁数は21年の26から11へ激減した。3番トラウトの前の2番を打つケースが多く、企図数自体が減少した影響とはいえ、成功率も72%から55%と下降した。投打に注目が集まりがちとはいえ、大谷はスピードも一級品。今季からはベースの大きさが拡大されることもあり、メジャー全体で盗塁への意識は高い。大谷にとっては、企図数が増えるだけでなく、成功率が上がれば30盗塁以上も十分可能。となれば、昨季のア・リーグ盗塁王マテオ(オリオールズ)の35盗塁も決して届かない数字ではない。

今オフは1月下旬に同地入りし、トレーニングを継続。球団の方針などもあり、侍ジャパンへの合流は3月上旬となる見込みだが、すでに自らのSNSで打者相手の投球や屋外でのフリー打撃の映像を公開するなど、例年以上のペースで調整を進めてきた。投げて、打つ、だけでなく、「走る」のも全力。日本ハム時代以来、栗山野球を熟知した大谷が、世界一へ向け、一切、手を抜くはずもない。

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▼侍ジャパンは過去4大会いずれも全チームトップの盗塁数を記録した(第1回より、13、11、7、11)。第3回大会第2ラウンド初戦の台湾戦では1点を追う9回2死から鳥谷(阪神)が二盗を決め、同点につなぐ「神走塁」とたたえられた。他の追随を許さない機動力が、優勝2回、4強2回の結果にも現れている。

一方、第3回優勝のドミニカ共和国は2盗塁のみ。前回優勝の米国にいたっては1盗塁だ。盗塁が多いから優勝できるわけでもない。チームカラーをどう出すかに尽きる。栗山監督は「ゲームが動かないとき、足を全く使えないで、さあ打って下さいという状況だけは避けたい」と全員が走る野球を掲げる。盗塁に限らず、1ヒットで生還など足で局面打開を図る。2番の可能性もある大谷の走塁への意識は、指揮官が目指すスタイルに合致する。【侍ジャパン担当=古川真弥】

◆大谷の好走塁 最近では21年7月2日オリオールズ戦の9回、四球で出塁すると二盗に成功。続くウォルシュの浅い右前安打で間一髪のサヨナラ生還。同8月13日アストロズ戦では8回に詰まりながら三遊間へ打ち返し、打球処理の遅れを突いて一気に二塁を陥れた。同31日ヤンキース戦では5回2死一、三塁から、相手捕手が二塁に送球した瞬間にスタートして本盗成功。21年は46本塁打、26盗塁をマーク。史上初の「50発&30盗塁」に迫った。

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