アスレチックス藤浪晋太郎投手(29)がトレードで、ア・リーグ東地区首位に立ったオリオールズに電撃移籍することが19日(日本時間20日)、分かった。

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◆背景 オリオールズの藤浪獲得は、勝つため以外の何ものでもない。超激戦区のア・リーグ東地区で勝ち抜くために必要なピースとして、トレード期限まで約10日間以上前に、他球団に先んじて最速164キロ右腕に白羽の矢を立てたと言っていい。

16年を最後にポストシーズンから遠ざかってきたとはいえ、オ軍は堅実にチーム再建を進めてきた。18年以降、コロナ禍で60試合に短縮された20年を除けば、21年まで年間100敗を喫した。だが、昨年、19年ドラフト全体1位で入団した捕手ラッチマンがデビューして以来、チームの空気は一変した。同捕手は今季の球宴にも選出されるなど、中心選手として定着。WBC米国代表のムリンス、球宴にも選出されたヘイズら若手野手が順調に成長し、首位争いに加われるほど、戦力は充実した。

だからこそ、藤浪の快速球が必要だった。抑えでリーグトップタイ26セーブのバティスタ、防御率1・58のセットアッパーのカノと今季球宴に初選出されたが、ともに実質2年目で大舞台の経験はなし。最近は疲労感も目立ってきた。米国では新人とはいえ、NPBで経験豊富な藤浪が貴重なバックアップとして請われるのも当然だった。

先発へのこだわりを持ち続ける藤浪本人にすれば、理想型ではないかもしれない。だがリリーフ転向後の投球は強豪球団からもニーズが高かった。「必要とされる」のはプロ野球選手としての基本。「消化試合」ではなく、緊迫感に満ちた優勝争いの中で腕を振る藤浪の姿を望んでいるファンは、数多かったに違いない。【MLB担当=四竈衛】