ドジャース山本由伸投手(27)が、今季のレギュラーシーズン最終登板で6回4安打無失点2四球7奪三振と好投し、12勝目を挙げた。優勝がかかった試合でも存分に力を発揮し、チームの地区4連覇に貢献。MLB取材歴8年目の斎藤庸裕記者が、コラム「Nobu’s Eye」で迫った。
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山本は、メジャーの舞台でも大一番に強かった。シーズン終盤、負けられない戦いで何度もチームを救った。だが、決して強靱(きょうじん)なメンタルを持っているわけではない。「緊張しますけどね、毎試合。ネガティブにもなる」。日米のリーグに加え、国際大会で場数を踏んでも先発前には胸の鼓動が高鳴る。そんな時、心の支えや自信の裏付けとなるのは何か。
「おまじないをして、しのげるものではないので。毎日を頑張っておくと、緊張した時に深呼吸をして、落ち着いたら『いける』みたいな状況になりますけど、何もしなかったら戦えない。とにかく、自分に力をつけておかないと。必死にやっているだけですよ」
身長178センチで、欧米や南米選手と比べれば体格で劣る。プロ入り後、18歳の頃から柔道整復師の矢田修氏に師事し、トレーニングを継続。現在も定期的に指導を受けながら、やり投げ、登板間や登板直前の大遠投など斬新な練習を行っている。周囲の雑音もあったが、信念は揺るがない。
「いろんなこと言われたりはしますけど、みんな知らないのに言ってきただけなので、それに対して何も思わない。自分もそんなに活躍してなかったし、(周囲の声も)分かるんですけど、やるしかなかったというか、そんな感じです」
気持ちに、よどみはなかった。“由伸流”を突き動かす、その根幹には何があったのか-。
「結果出したいとか、欲じゃなく、ただ、良くなりたい。もっともっと純粋な気持ちのところでやろうと思えたから、頑張れたのかなと。今もまだ、途中ですけどね」
もっといいボールを投げたい、うまくなりたい-。青天井の向上心は、チームメートの二刀流・大谷や、ムーキー・ベッツら野球愛を貫くド軍の集団の中でピッタリはまる。「シーズンで例えば30試合投げて、100点ってほぼないじゃないですか。1試合あるかないか。うれしい瞬間はほんとにちょっとです」。今季は、好投しながら勝てない日々が続いたことも多かった。それでも「みんな毎日明るいし、朝からすごいじゃないですか」と周囲には笑顔があふれ、デーゲームのクラブハウスで充満するエネルギーに驚かされる。
自身もよく笑い、ポジティブな空気感が漂う。「なんでだろう。昔からヘラヘラしてたかもしれないです。ゲラ(笑い上戸)だし」とニヤリ。もっとも、自然体でいられるのは家族的なチームカラーのおかげだ。
「ドク(ロバーツ監督)もすごいチームワークを大事にしてて。みんなが輪に入れるように、いろんなことをやっていたんです。例えばピックルボール大会とか、コールド・タブ大会(水風呂にどれだけ長く入れるか)とか、サッカー好きな選手がいたら、PK対決とかして、みんなで楽しんだり。ルーキーの活躍をベテラン選手も皆が喜んだり、ファミリーな感じに近いというか、そういった雰囲気がすごくいい」
右肩痛で離脱していた昨夏も、気にかけてくれた仲間に救われた。「リハビリ中、ムーキー(ベッツ)がいっぱい食事に誘ってくれたりして、すごくなじみやすい雰囲気を作ってくれて」と感謝の気持ちがある。助け合いは、逆もしかり。今シーズン終盤、自身の登板時に救援失敗を重ねた左腕スコットとハグし、満面の笑みで励ました。クラブハウスでは日本語であいさつも交わす。そんな“由伸式コミュ術”が、落ち込む同僚の手助けにもなった。
9月初め、ポツリと言った。「もう9月ですか。早いなぁ」。先発の調整でチーム休養日に練習することは珍しくない。1シーズンで完全休養は数日。心の浮き沈みがないわけではない。
「うまくいかなかったら、僕も悲しいというか、落ちますよ。自分が強いとは思わないし。しっかり、正しい道で頑張るのみです」
真っすぐ、純粋に上を目指した。優勝請負人とも言われるが、よく口にするのは「みんな、本当にいい人ばかりで良かった」。信じて、笑って、突き進む。由伸流とド軍の結束力の融合が、常勝の継続に導いた。



