元オリックス、巨人の鈴木優氏(29)が、日刊スポーツ特任記者として、「Yu,s Eye」で現地から日本人メジャーリーガーの秘話などをリポートします。今回は、ドジャース山本由伸投手(27)とレッドソックス吉田正尚外野手(33)のキャリア初対戦を分析。元チームメートの視点から、マウンドと打席、18・44メートルの間でせめぎ合った、それぞれの心情に迫りました。
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オリックスを共に支えた最強の矛と盾が、ようやく海の向こうで交わった。ファンはもちろん、私にとってもかつての元チームメート2人がメジャーの舞台でぶつかる姿を、目の前で見届けられたことは特別な意味があった。
由伸は前日、正尚さんとの対戦の記憶をこう振り返っていた。「紅白戦かなんかで対戦したのが最後ですかね?良い当たりのセンターフライとかだったような気がします」。細かな記憶までは残っていない様子だったが、対戦を控えての印象は明確だった。「データを見ても空振りが多いゾーンがほとんどなくて、改めてすごい打者だなと思いました」。空振りが取りにくい打者。手を焼くタイプであることを、由伸も準備段階から一番理解していた。
一方の正尚さんは笑いながら謙虚に語っていた。「あんまり(前回対戦は)覚えてないけど、今は世界の山本投手だからね、胸を借りるつもりで頑張りたい」。そして迎えた第1打席、由伸が軽く帽子に触れるようなしぐさであいさつし、勝負が始まった。カウント2-2からの5球目、由伸が自ら捕手にサインを出した。外角ボールゾーンからストライクへ入ってくるカットボールで見逃し三振。正尚さんのバットは全く動かなかった。由伸の決め球としては意外性のある一球で、裏をかく配球だった。
あの球の意図は-。「外のカットボールは試合前から考えてました。低めの変化球を当てるのは本当にうまいので、あえてですね。狙い通り完璧に投げられました」。準備した通りの一球を、勝負どころで完璧に投げ切る。さすがの1球だった。もう1つ、由伸は大切なことを口にしていた。「関係性の深い先輩だったので意識しすぎないように心がけてました」。苦楽をともにした元同僚に対し、感情が入り過ぎれば投球にも影響が出る。だからこそ、あえて“いつも通り”。仲間としての感情でなく一人の好打者としての対戦を心がけた。この線引きができるところに、投手としての成熟度が表れている。
第2打席、第3打席も丁寧に攻めて打ち取り、結果は3打数無安打。この日は由伸に軍配が上がった。空振りを取りにくい打者だからこそ、ボール球で崩す発想を抑え、ゾーン内で勝負を挑む。フォームのタイミングも微妙に変えながら、持ち球の大半を使って攻めた。技術と駆け引きが凝縮された、超が付く真剣勝負だった。2人ともメジャーの舞台で確実に進化を遂げている。だが由伸がプレートに立ち投球を始めるまでの姿や、正尚さんが打席で力を抜きながらスッと構えを決めるしぐさ、1つ1つにオリックス時代の姿と重なる瞬間があった。
もちろん、この1試合で2人の勝敗の全ては語れない。次に対戦するときには、正尚さんが違う答えを準備してくるだろう。由伸もまた、次の1球目から考え直すはずだ。ここからが本当の勝負でもある。オリックスというチームを共に支えた2人が、メジャーの舞台で全力でぶつかった。その姿を見られたことは、私も含め、楽しみにしていた人々にとって幸せな瞬間となったに違いない。



