【フェニックス(米アリゾナ州)24日(日本時間25日)=広重竜太郎】アスレチックス松井秀喜外野手(36)が「マネーボール」を実践した。移籍後初実戦となる紅白戦(3回限定)で主力組の5番DHで出場。3、4番の連打から迎えた1回裏1死一、二塁で中前適時打を放ち、「初打席初安打初打点」をマークした。出塁率に重きを置くチーム方針のもと、ア軍はクリーンアップを総入れ替え。中核の期待を担う松井が、早速、求められる役割を演じて見せた。

 松井が静かな威圧感を与えた。移籍加入組の3番デヘスス、4番ウィリンハムの連打で迎えた初回1死一、二塁(2死もコーチ指示でアウト数を変更)。左腕クレイマーに対し、悠然と呼吸を合わせる。初球の外角へのカーブは見逃し、2球目の外角直球は真後ろへのファウルと松井ペース。そして4球目、外角低めへの140キロ直球をセンター前に、完璧にはじき返した。昨季2割3分6厘と苦しんだ左腕対決を難なく制し、新天地初打席で、ひと味違う姿を見せた。

 「久しぶりの感じだったけど、ある程度、ボールは見えていた。最初はあまり結果を気にせずやろうと思っていたけど、結果がいいにこしたことはない」と気分は悪くない。マシン、コーチが投じる球を打ち込んできた今キャンプで初めて見る生きた投手の球だが、対応できた。対戦したクレイマーも「今年のチーム売り出しの打者だからタフだった」と話した。

 チームが描く理想の打線の形を披露した。ビリー・ビーンGMはチーム編成の上で出塁率や長打率に重点を置く。同GMを主人公に描いた本「マネーボール」にもある独自スタイルは有名だ。この日の3、4番にビッグネームはいないが、松井も含めた移籍トリオの出塁率は昨季クリーンアップ(表参照)より3分以上も高い。昨季、リーグ1位の防御率を誇りながらも、打撃低迷でプレーオフ進出を逃した。テコ入れした今季の3、4、5番の有力候補を実戦初戦で試し、大トリの松井が得点を生み出した。

 ゲレン監督は「3人の新加入選手が役割を果たした。3連打はとても印象深かった」と振り返った。3番デヘススは「我々3人の組み合わせはいいと思う。自分はスキを見つけ、後続のウィリンハム、ヒデキのために塁に出る」と、つなぎの意識を強調した。

 松井は1打席で交代し、その後はティー打撃で112球を振り込んだ。この日のクリーンアップには「まだ紅白戦。1カ月かけてシーズンに備えるわけだから、今はあまり気にしていない」と話すにとどまった。「いい打席を重ねて、徐々に内容の伴った結果が出るようにしたい」。今は個人の打撃を磨くことが先決だが、重要な役割を担うことを実戦初戦で知らしめた。