楽天からFA(フリーエージェント)宣言した岩隈久志投手(30)が5日、マリナーズと入団合意に達した。1年契約で年俸150万ドル(約1億1250万円)。300万ドル(約2億2500万円)の出来高払いはつくが、楽天での昨季年俸3億円から大幅ダウンする。それでも「お金じゃない」と夢を貫いた。背番号は「18」に決定。日本時間の今日6日、マ軍から正式発表される。岩隈は東京でトレーニング中のため、同日の本拠地シアトルでの入団会見に国際電話で臨む。(金額はすべて推定)

 異例の条件にも岩隈は動じなかった。日本で107個もの白星を重ねた右腕の年俸は150万ドル(約1億1250万円)。昨季から約60%もダウンする。しかも1年契約。2年目のオプションもないという。アスレチックスやオリオールズとも交渉した。マ軍は他球団より条件は悪かったが「最初はびっくりしましたけどオファーをもらいうれしかった。やってやろうと、やる気になりました」と、むしろ前向きにとらえた。

 ポスティングシステム(入札制度)でメジャー移籍を図った1年前、独占交渉権を落札したアスレチックスの提示は「4年総額約12億2000万円」。だが、現地で「岩隈が7年100億円を要求」と誤報が流れた。当時のア軍の交渉態度にも疑問を感じた。結局、決裂。条件だけなら、あの時に行っておけば、と言われるかもしれない。しかし「お金じゃないんです。必要としてくれているか、です」。意志は固かった。

 昨年末、長女の羽音(うた)ちゃん、義父の楽天広橋コーチと極秘渡米。シアトルを訪れた。「仙台に似ている。気候も変わらない。海も近くて」。日系社会が確立した港町に、愛する“故郷”を重ね合わせた。マ軍ズレンシックGMとも会食し、必要としてくれていると強く感じた。メディカルチェックも問題なく終了。羽音ちゃんが町を気に入ったこともあり、最終的にマ軍入りへ傾いた。

 心意気に、マ軍も応えた。背番号「18」を用意され、岩隈は「希望を聞いてくれました。気持ち新たに背負います」と感謝した。日本のエースナンバーで勝負する公式戦お披露目の場所は、くしくも日本かもしれない。マ軍は3月28、29日、東京ドームでアスレチックスと開幕カードを戦う。順調に行けば、勝手知ったる日本のマウンドで、エースのヘルナンデスとともに、どちらかに先発するチャンスは十分ある。「イチローさんとムネ(川崎)がタッグを組んで。そこで投げられたら」と目標に掲げた。

 一段落つき「ホッとしています」と漏らしたが、本当の勝負はこれから。たとえ困難があっても「家族とともに戦います」。近鉄で、楽天で、日本代表で見せた有無を言わさない投げっぷりを異国でも見せるだけ。岩隈久志は心に曇りなく、スタート地点に立った。