楽天のドラフト1位・安楽智大投手(18=済美)が上々のプロデビューを飾った。イースタン教育リーグのヤクルト戦で実戦デビューし、8回の1イニングを打者3人、わずか12球で無失点に抑えた。最速は146キロながら、キレのいいスライダーで2者連続奪三振をマーク。キャンプ中盤から2軍で取り組んできたフォーム固めの成果が出た。球団は大きく育てる狙いから、今後2年間は2軍で育成する方針を固め、本人が目標に掲げていた「開幕1軍」はなくなった。

 マウンド上の安楽が首を振った。8回に4番手で登板し、先頭の川上を直球2球で追い込んだ時だった。捕手のサインに首を振り、自ら選んだスライダーで見逃し三振を奪った。「狙ったというか、勝負球で行きました」と、自身の調子を冷静に見極め、ストライクゾーンに変化球を落として3球三振に仕留めた。

 昨年7月24日、愛媛大会3回戦の東温戦以来となる対外試合だった。杉山2軍投手コーチは「本人が実戦派とかデカい口をたたいているからどれくらいやれるかと思ったけど、抑えたね」と、大舞台を踏んできた勝負勘を認めざるを得なかった。

 続く山川も直球だけで1-2と追い込んでから、低めいっぱいに落ちるスライダーで空振り三振に仕留めた。「しっかり低めに決まったし、狙い通りでした」と、硬かった怪物の表情が崩れた。酒井2軍監督は「対バッターになるとアドレナリンが出る。並の新人じゃないよ」と、あらためて評価した。

 高校時代の最速157キロに及ばない、146キロ止まりだったが、手応えはあった。高校2年秋に、右肘尺骨神経まひを発症し、フォームを崩した。今キャンプでは直球も変化球も球威、キレがなく、2月14日に2軍落ち。故障前のような、左手のグラブを砲丸投げの選手のように高々と突き上げ、背中の後ろから見えるほど右腕を反らせる大きなテークバックを取り戻すべく、2軍ブルペンで投げ続けた。この日はセットながら持ち味のテークバックが戻り、安楽も「テークバックを大きくすることで、肘が上がってたたけるようになってきた」と怖がらずに腕を振った。

 確かなプロ第1歩を踏み出したが、球団はこの日、今後2年間は2軍で鍛え上げ、3年目で1軍ローテーション投手に育てる方針を明確にした。酒井2軍監督は「中途半端に1軍に上がってもしょうがない。近い将来エースになるように」と説明。安楽も「早く1軍に上がりたいけど、今は結果を求めていきたい」と口を結んだ。実績とチームの信頼を得て、真のエースを目指す覚悟を固めた。【鳥谷越直子】