男性の心拍数は、1分間で平均60~70回程度だという。心臓の拍動は、約0秒86~1秒の間に1回となる計算。DeNA久保康友投手(34)は、この一瞬の間に、投球動作の始動から捕手のミットにボールを収めるまでを完了させてしまう。

 今季の開幕投手12人を対象に、4月7~12日の登板試合でクイックモーションのタイムを測定した(球種は直球)。もっとも速かったのは、久保の0秒86だった。球界トップスピードといわれているだけに、やはり、という結果。しかし、そのタイムで投げられることが、どれだけすごいのか。実感がわきづらかったが、心臓の鼓動の間隔とほぼ同じと知ると、その卓越した技術のすごさを身近に感じることが出来る。

 南海で兼任監督を務めていた野村克也氏が、阪急・福本豊氏の盗塁を阻止するために考案したというクイックモーション。1973年のことといわれるが、それから40年以上が経った。久保は1秒を切るまでにその技を高め、今では盗塁を企画することも難しい。そんな男相手に、もし、陸上100メートルで9秒台突入が期待される桐生祥秀が二盗を狙ったらセーフなのか、アウトなのか-。数字を知り、そのすごさを実感すると、そんな「タラレバ」にも興味がわいてくる。【佐竹実】