日本ハムが土壇場の「甲子園野球」で逆転勝ちだ。セーフティースクイズで同点に追いついた9回1死二、三塁、代打の松本剛内野手(23)が決勝の2点適時二塁打を放った。高校野球の名門、帝京の主将として出場した11年夏甲子園は自らの失策がきっかけで敗退。苦い思い出が残っていた聖地で、過去の悔しさを振り払う一打。交流戦3連勝、敵地連敗を5で止める白星をもたらした。

 静まりかえった聖地の景色は、今まで以上に鮮やかだった。最終9回に同点とし、なお1死一、三塁。松本は代打で打席に送られた。「食らいついていく気持ちだった」。一塁走者の中島が二盗を決めて二、三塁と好機は広がり、カウント1-1から思い切り引っ張った。打球は三塁線を抜けた。決勝の2点適時二塁打となった。

 栗山監督も興奮していた。松本を代打起用した意図を「それはシーズンが終わってから」と伏せたが、託したい思いもあった。

 スポーツキャスター時代に担当したテレビ朝日系「熱闘甲子園」で、最初に取材したのが松本だ。6年前の夏の甲子園。帝京の主将として出場した松本は、自らの失策をきっかけに逆転負けを喫して2回戦敗退。指揮官はブログで「帝京高校 松本剛くんへ」と思いをつづった。

 松本も当時、その文面を目にした。その約2カ月後、栗山監督が就任した日本ハムからドラフト2位指名された。「不思議な縁ですね。頑張りたい」と、プロ野球人生の起点に、悔しさを糧に成長を願う指揮官の思いを心に留めた。

 2軍でもがくシーズンが続いたが、今季はしがみついている。「ああいう場面で代打で使ってもらって、結果を出せてうれしい」と笑みが弾けた。栗山監督も「選手に聞いてあげて。よく頑張った」と、松本を含めてたたえた。思い出の地で苦い記憶を振り払った一打が、チームを3連勝に導いた。【木下大輔】