プロ3年目のソフトバンク松本裕樹投手(21)が2度目の先発でプロ初勝利を収めた。DeNA打線を相手に5回2/3、3失点。スタンドで両親が見守る中、地元横浜で初白星を飾った。

 「前回はふがいない投球をしてしまったので、取り返せてよかった。この球場で勝ててうれしい。今年1年、1軍で投げ続けられるように頑張りたい」

 子供の頃、よく観戦に訪れた思い出の球場で、丁寧に低めに球を集めた。5回まで無四球1安打。1点差に迫られ、6回2死で救援を仰いだが、投げるたびに成長している。プロ初先発だった前回5月27日の日本ハム戦は6点リードの中、勝利投手の権利まであとアウト2つ、5回1死二塁で降板。この日は違った。

 盛岡大付時代には右肘を痛め、1度は野球をやめることも覚悟した。3年夏に岩手県大会で優勝した後は、甲子園初戦当日まで1度もボールを握れず。周囲には「ドラフト指名もかからないし、この先もう野球もできないと思った」と漏らすほどだった。プロに入っても、1年目はリハビリの日々。その秋に3球団競合の末、高橋純平の獲得が決まると「僕のことなんてもう誰も覚えていないですよ」と、下を向いたこともある。ただ、入団時に150キロ右腕と騒がれた逸材は、自分を見失わなかった。「150キロは1回だけ。そういうタイプじゃない」。腕の位置を上げて肘の負担を減らす今のフォームをつかみ、先発マウンドまでたどりついた。

 工藤監督も「ボールを操ることに関しては、チームでも1、2番。体力をつけてもう少しスピードが出れば、もっと勝てる投手になる」。チームに今季最多の貯金14をもたらした若き右腕に期待を寄せた。【福岡吉央】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日、横浜市生まれ。小1で野球を始める。小2で横浜スタジアムでのスピードガンコンテストに参加し、小6で横浜市の少年野球大会で優勝。中学時代は瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では春夏合わせて3度甲子園出場。高校通算54本塁打と打者でも活躍した。14年ドラフト1位でソフトバンクに入団。182センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。