熱気がこもる甲子園で涼しげに任務を遂行した。巨人阿部慎之助内野手(38)が2安打1打点で虎の前に立ちはだかった。3回1死、低めの直球を「ミートを意識して」と中前へクリーンヒット。1点リードの5回2死一、二塁ではしつこい内角攻めを振り払い、詰まりながらも右前へ適時打を放った。6月18日ロッテ戦で右膝を負傷。一時は戦列を離れていた主砲が、復帰後初の適時打&マルチ安打で存在感を示した。

 プロ17年目で2000安打の大台まで残り27安打。こつこつと積み上げた数字は、グラウンドに立ち続けてきた足跡だ。年齢を重ねるごとに負傷のダメージは重くのしかかり、復帰までに時間を要する。だが阿部は違う。今回の離脱は、わずか12日間で1軍復帰にこぎつけた。「やれることを全てやる。少しでも効果があるなら取り入れる。1日でも早く(1軍に)戻ることにつながると思うからさ」と積極的なリハビリ生活を過ごした。

 早期復帰を助けたのは“超冷却装置”だった。海外のアスリートたちがすでに取り入れている「クライオサウナ」をリハビリに取り入れた。液化窒素の冷気で氷点下110~190度の極低温環境で全身を冷却することで効率的に自然治癒力を高める効果がある。ジャイアンツ球場での練習後に連日、都内まで通い詰めた。待合室では「1日でも早く。それだけだよ」と呪文のように繰り返し、冷たくなった右膝をさすった。

 2本塁打を放ち負傷交代したロッテ戦から19日が経過した。“冷凍保存”をしていた打撃の好感触が戻ってきた。「だいぶ感じが良くなってきた。4番はチャンスで回ってくる回数が多い。1回でも多く(走者を)かえせるように」と気持ちよさそうに汗を流した。チームの借金は9。マイナスからの超回復をもくろむ。【為田聡史】