巨人高橋由伸監督(42)が「ミスター流」で金の卵を引き当てる。26日のドラフト会議で1位指名が重複した場合、高橋監督は右手で抽選のクジを引くことを23日、決めた。1位指名は超目玉の早実・清宮幸太郎内野手(3年)が濃厚。自宅で神棚に手を合わせてから会場入りし、右手で当たりクジを引き寄せるという、92年に長嶋茂雄監督が星稜・松井秀喜選手を引き当てた当時と同じ手順で交渉権獲得を狙う。
高橋監督は真剣そのものだった。巨人が1位指名の最上位に据える清宮は、複数球団の指名が確実視されている。抽選となった場合、就任2年目で初めてクジ引きの大役を務める。「くじ運はあまり良くない。今まであまり当たったことがないしね」と苦笑いする。
だが、用意は周到だ。報道陣に「過去のドラフトで、どちらの手の方が当たりくじを引いているの?」と逆取材。現制度となった09年以降、重複した31人の抽選では右手で24人の当たりを引いている。「確率からいったら右手になる」とデータを重宝すると決めた。
巨人が球史に残る高校生スラッガーを引き当てたのも「右手」だった。92年、星稜・松井を4球団が1位指名。「クジは強い方じゃない」と自認していた長嶋監督が当たりを引いた。長嶋監督は当日、自宅の神棚に手を合わせてから会場入りし、迷わずに右手を抽選箱に突っ込んでいた。
高橋監督も「実力も魅力もずばぬけている。会見の発言とかを見ても魅力のある選手」と絶賛した清宮との縁をつなぐため、流儀を重ねる。「うちにも神棚はあるんだよ。独身のころからあるけどね。低いところに置かないとか、人の通らないところに置くとか場所にも気をつけているよ。昔から毎日祈っている」と明かした。かつての長嶋監督のように、出発前に神棚に手を合わせて抽選は右手と、同じ手順を踏む考えだ。
2日に面談した10球団で唯一、球団幹部として石井球団社長が同席するなど、若返りを図る巨人に清宮は欲しい選手の1人。高橋監督も運を引き寄せるためなら手段は選ばない。ドラフト会場への入り方も「西北の通りから来ればいい? そうだな(笑い)」と、早大校歌の冒頭「都の西北」にかける念の入れようだ。長嶋監督と松井のように、高橋監督が清宮との赤い糸をたぐり寄せる。【浜本卓也】
◆92年ドラフト 巨人長嶋監督が、4球団競合となった松井の交渉権を引き当てた。クジは4番目。最後に残った封筒が当たりだった。直後は右手の親指を立て「用紙をオープンしまして、思わずうれしくなって」と興奮。星稜高で授業中だった松井は監督から電話を受け「阪神ファンでしたから(巨人は)憎かった。でもあの人を憎いという人はいないでしょう。僕の(巨人に対する)イメージも変わりました」と話した。
<ドラフトと験担ぎ>
★紅白のふんどし 95年、近鉄佐々木監督は紅白のふんどしを締めて7球団競合の福留(PL学園)を引き当て「よっしゃー!」と雄たけび。
★スクールカラー 西武渡辺監督は、09年に6球団競合の菊池(花巻東)を引き当てた。前日は岩手の地酒「南部美人」を飲み、スクールカラーの紫のボールペンを携帯。SDで挑んだ昨年も、選手にちなんだ色のパンツを用意して今井(作新学院)の単独指名に成功。
★参拝、カレー、スーツ 楽天の立花球団社長は、神社の参拝と、ドラフト前日と当日朝に食べるカレーライスがルーティン。12年には証券マン時代に最大6000億円の商談をまとめた勝負スーツを着用。2球団競合の森(東福岡)を引き当て、13年松井裕(桐光学園)、14年安楽(済美)とクジ引き3連勝を達成。