26日のプロ野球ドラフト会議で、巨人から育成1位で指名された盛岡大付(岩手)の比嘉賢伸内野手(17)が30日、盛岡市内の同校で巨人から指名あいさつを受けた。比嘉は早速、同じ高卒遊撃手で巨人の看板選手、坂本勇人(28)を目標に掲げ、1年目から支配下選手登録を勝ち取ると、意気込んだ。

 「坂本2世」になってみせる。比嘉は緊張した面持ちながらも、会見で堂々と自分の夢を口にした。脳裏には、大スターの残像が再生されていた。

 比嘉 坂本選手は高卒で、今もずっと活躍している。自分の理想像。たどってきた境遇も似ている。坂本選手のようになりたい。

 左右の違いこそあるが、共通項は多い。兵庫出身の坂本は高校から青森の光星学院(現八戸学院光星)に野球留学し、高3春のセンバツに出場。比嘉も大阪から岩手にやってきて、坂本を上回る3度の甲子園の土を踏んだ。元メジャーリーガーの巨人柏田貴史スカウト(46)は、今年の東北最強チームの主将として春夏連続で8強に導いた比嘉を、ひそかに着目していた。

 柏田スカウト 打撃がいいのはもちろん、甲子園という大舞台で春も夏も結果を出している。チャンスが回ってくる人間というのは、何か持ってないと、そういう場面にはならない。そこできっちり結果を出す技術と精神的な強さを評価している。

 象徴的なシーンがある。今夏の甲子園、8月16日に行われた松商学園(長野)との2回戦。8月3日に祖父武一さんを75歳で亡くしたばかりの比嘉は、天国にいる祖父のために結果で報いた。主将としての責任から葬儀には参加せず、祖父の結婚指輪を首からぶらさげてプレーし、9回にソロ本塁打を放った。「おじいちゃんのために1本打ちたかった。喜んでくれていると思う」と試合後は涙を見せず、気丈に振り返った。

 比嘉は高校通算37本塁打の長打力に、堅実な遊撃守備、そして類いまれなキャプテンシーと3拍子そろっている。「しっかりバットが振れるのが自分の魅力。通用するのは一握り。育成から、はい上がっていきたい」。決死の覚悟でプロの世界に飛び込む。【高橋洋平】