ソフトバンクが無傷の3連勝で2年ぶりの日本一に王手をかけた。「SMBC 日本シリーズ2017」第3戦は、工藤公康監督(54)の積極采配でDeNAを1点差で振り切った。この日、今シリーズ初めてスタメンマスクで起用した高谷が初回に盗塁を2度刺し、4回には中前へ2点適時打と攻守に大活躍。このまま今日1日、4連勝で横浜の夜空に舞う。

 パ王者が3連勝で日本一へ王手をかけた。「みんなで力を合わせて、明日(1日)決めるという気持ちでやりたい」。工藤監督は試合後の勝利監督インタビューで4連勝への強い思いを口にした。

 先発武田を5回途中であきらめ、早めの継投に入った。「すばらしいリリーフ陣。僕の中の7、8、9回は絶対」と、延長15回を考えずモイネロ、岩崎、サファテと自慢のリリーフ陣で1点を守りきる策に出た。

 その投手陣を引っ張ったのは、この日が今シリーズ初スタメンマスクの高谷だった。初回、肩で救った。先発武田が先頭桑原をフルカウントから歩かせた。2番梶谷の2球目、桑原が走る。高谷は素早く二塁へ送球。完ぺきなコントロールで刺した。続く梶谷も歩かせ、2死一塁となった4番筒香の初球。またも梶谷が走ったが、これも刺してDeNAの足を封じた。「今日は投手陣の頑張りに尽きる」と遠慮がちに話したが、35歳のベテランがDeNAに流れを渡さなかった。

 今季の高谷の盗塁阻止率は1割9分4厘(12刺盗塁、50許盗塁)と、決して肩が強いとは言えない。それでも「常に準備はしている。いろんな作戦をしてくる状況だった。アウトになってよかった」と大舞台で正確なスローを披露した。昨年7月に半月板の手術をした左膝は万全ではない。今も週に1度は膝にたまった水を抜く。下半身も使えず、肩の衰えをカバーするため正確な送球を練習してきた成果が表れた。

 マスク越しの観察眼はバットでも生きた。4回。1死二、三塁の場面でウィーランドの148キロの直球を中前へ運ぶ貴重な2点タイムリーを放った。「早く追加点が取りたいと思っていたので。いいところに飛んでくれました」とガッツポーズ。直前の1死一、三塁の場面ではセーフティースクイズを失敗。だが、それ以上に価値ある1打を放った。

 CSで楽天に連敗した後、工藤監督が「バカになれ」と円陣で言った後はCS3連勝、日本シリーズ3連勝の計6連勝。指揮官は「明日も全員で初回からフルスロットルでいきます」。明るく元気に一気に日本一へ駆け上がる。【石橋隆雄】

 ◆高谷裕亮(たかや・ひろあき)1981年(昭56)11月13日生まれ、栃木県出身。小山北桜卒業後に富士重工へ進んだが、故障のため2年で退社。1浪後に一般入試で白鴎大へ。06年大学・社会人ドラフト3巡目でソフトバンク入団。179センチ、84キロ。右投げ左打ち。