稲葉ジャパンが初代アジアNO・1に輝いた。8月に就任した侍ジャパン稲葉篤紀監督(45)の初陣となった「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の決勝で韓国を7-0で破って優勝した。「スモールベースボール+パワー」をテーマに掲げる中で、機動力を駆使したスピード野球で頂点に立った。最大の目標に掲げる20年東京五輪での金メダル獲得に向けて、幸先のいいスタートを切った。

 宙に浮くはずの体がなかなか上がらない。優勝を決めた直後、稲葉監督は選手たちにうながされ、照れ笑いを浮かべてマウンド付近に歩みを進めた。歓喜の胴上げが始まるはずが、現役時代に185センチ、94キロだった体はなかなか持ち上がらない。2度、3度、4度…最後は選手が力尽きたように輪が崩れた。「みんな重い重いと言いながらだった。少しダイエットしないといけませんね」と笑った。

 スピードとパワーの融合を掲げて挑んだ初陣。機動力に小技を絡めて攻めた。4回無死一塁からは5番上林にバントのサインを出した。野選を誘って無死一、二塁と好機を広げると、ラッキーボーイの6番外崎が右越えに先制適時打。5回は4安打で3点を追加し、7回には西川にソロが飛び出した。全試合オーダーを替えた打線がつながり、11安打で7点を奪った。

 9日の宮崎合宿初日。全選手の前に立つと「ジャパンは勝たないといけない。勝利主義でいく」と宣言。グラウンドへのツバはき、相手チームへのヤジを禁じた。実戦で力を見極め、スピード野球の象徴だった1番京田、2番源田の新人コンビは開幕戦のみの起用で“解体”した。「試合で調子のいい選手とそうではない選手を見極め今日のオーダーを決めた。勝利主義を掲げた以上、当初思っていたスタメンよりはだいぶ変わってます」。

 4番山川以外は機動力を生かせる打線。クリーンアップと6番外崎、7番西川は固定し、中軸につなぐ1、2番と下位打線を模索した。2年前の11月19日は、プレミア12の準決勝で韓国に9回に3点リードを守れずに逆転負け。当時打撃コーチだった指揮官は「覚えています。今日は何点あってもいい。継投も最後まで何が起きるか分からない」と最善を尽くした。

 試合後のベンチ裏では、選手に感謝の言葉を伝えた後に続けた。「2020年に向けて、また日の丸を背負ってやりたいと思うように、これからも成長してほしい」。来年3月には初のフル代表を招集し、金メダル獲得を目指す道のりが本格的にスタートする。【前田祐輔】