チーム、そしてミスターのために、勝つ! 勝つ! 勝~つ! 巨人山口俊投手(30)が11日、宮崎キャンプを視察に訪れた長嶋茂雄終身名誉監督(81)から激励を受けた。今日12日の紅白戦登板へブルペンで106球を投げ込んだ後、長嶋氏から直接声をかけられた。肩や背中もたたかれ、ミスターのパワーも注入完了。1勝に終わった昨季からの再起を促された。

 濃密な5分間だった。山口俊はブルペン投球を終えると、後方で熱視線を送っていた長嶋終身名誉監督へ、小走りで向かった。「初めてお会いした。緊張しました」。脱帽し直立不動。真剣な表情で金言に耳を傾けた。時折、笑顔の長嶋氏から肩や背中にタッチを受け、パワーを注入された。「今年は頑張ろう、と言っていただけた。直接声をかけていただき光栄に思います」。レジェンドの言葉を心の底からかみしめた。

 長嶋氏は当初、ブルペンの捕手側で見ていたが、自ら投手側へ移動。隣でともに投球を見た斎藤投手コーチに「ボールはいい」と高評価の声を漏らし、言動の節々に期待がにじみでた。

 長嶋氏 山口君には頑張ってもらいたいなというのがあります。昨年はああいう事件があって、あるいはケガがあって1年通じて投げられなかった。そろそろゲームに出て、チームのために貢献してもらいたい。

 昨年7月の暴力トラブル後には「巨人軍たる者、ああいうことをしちゃいかんね」と苦言も呈した。だがそれだけ、投手陣の中心となれるだけのポテンシャルを買っていた。

 昨季1勝の右腕は、苦言を素直に受け止めた。猛省し、新球シンカー習得に着手するなど鍛錬を重ねた。「200イニングを投げればおのずと結果はついてくる」と普段は具体的な数字目標を口にしないが、激励に応えるように再起への道を見据えた。「周りのおかげで巨人のユニホームを着させてもらっている。長嶋さんの言葉を胸に秘めて、1年間マウンドに立ちたい」。ミスターへの恩返しへ、求めるものは勝利だけだ。【桑原幹久】