超人が特大の広島優勝マジック点灯阻止弾だ。阪神糸井嘉男外野手(37)が巨人戦の8回に、勝ち越しの13号ソロを東京ドームの右翼席上部にぶち当てた。推定140メートル弾のビッグアーチ。自力優勝の可能性が消滅するケースがあった一戦をモノにした。

 東京ドームが止まった。一瞬の静寂から、歓喜の声が一気に湧き上がる。糸井が思いっきり、のけぞった。背中にバットがゴツンと当たるほど振り切った打球は、高々と舞い上がって勢いを止めない。右翼最上部にある「NABEKAI」の看板を越えてドゴンと着弾。推定140メートルの驚弾となった。

 「完璧でした。人生最高? それぐらいの当たりだった。負けられないんで、なんとか勝ちにつながってよかったです」

 振り抜いたバットを上空に向けて放り投げ、ゆったりと歩き出したほど確信のアーチ。チームトップの13号ソロは決勝弾でもあり、広島のマジック点灯を阻止する一打だった。

 「僕らのチームはもう負けられないんで。勝つだけと思ってやってます。波に乗って、次も勝てるように頑張ります」

 まだ右足腓骨(ひこつ)骨折は完治していない。試合前のフリー打撃でも、患部を守る特注レガーズを装着。「痛いのは痛いのよ」と言いながら、大仕事をやってのけるのも超人たるゆえんだ。

 金本監督からは「大きかったね。フルパワー全開やった!」と興奮気味にたたえられ「本当にいいところで、切羽詰まったところでよく打ってくれました」と褒められた。

 糸井は試合後にも“超人節”をさく裂させた。「行くぞ、トレーニング!」。糸井なら、打球も、虎の運命も-。どこまでも運んでくれそうだ。【真柴健】