主将が闘魂の1発だ。阪神福留孝介外野手(41)がDeNA戦で2点リードの3回に東の甘い変化球をジャストミートし、右翼席に10号ソロを運んだ。4年連続2桁本塁打。前日9日と同じく、結果次第では広島に優勝マジックが点灯する可能性がある状況だったが、それを阻止して3位に浮上。負けられない厳しい状況は続くが、福留は8月月間打率4割2分9厘。ベテランのバットは熱くなるばかりだ。

 バットを構えた瞬間から、福留のイメージは出来上がっていた。2点リードの3回1死、1ストライクからの2球目。DeNA東が投じたスライダーに体ごと入っていった。全身をしならせて力を伝え、振り抜く。バットに乗った打球は、一気に右翼スタンド中段に突き刺さった。4年連続2桁となる10号ソロ。41歳はクールにベースを回った。

 積み重ねた読みの1発。狙ったようにも見えるスイングに「それはいろいろ打席のなかで考えながら入っているからね。そういう(本塁打を狙う)こともあるんじゃないでしょうか」と不敵に笑った。1打席目は直球、スライダーの後の直球に併殺。この打席の初球はチェンジアップを見逃していた。打席を重ねて磨いた感性。真ん中にくれば、福留のものだった。

 41歳で2桁本塁打到達。球団では過去に金本監督しか達成していない。年齢を感じさせない働きにも「奇跡。そういう奇跡を起こせてよかった」と笑った。気温が上がれば上がるほど調子も上向く。8月は月間打率4割2分9厘と絶好調。4戦連続の打点で、広島のマジック点灯も阻止してみせた。何より「ランディが安定していた投球だったし、相手のチャンスがつぶれた後だった。いい1本になった」と胸を張った。

 打席での発想、気づき。体力の回復は落ちても、鋭さは増す。秘訣(ひけつ)は、ない。「泥まみれになってやってきて、覚えてきたことかな」。結果が出ず、苦しむ若手を遠くに見ながらぽつりと続けた。「必死にやってれば、勝手に覚えるから。絶対に」。だから「1球、ワンプレーに必死になれ」と伝える。その言葉の意味を、1発の軌道で示して見せた。

 前日9日の巨人戦に勝ち、流れに乗って連勝。借金を4に減らし、ヤクルトをかわして3位に浮上した。金本監督が「もちろん常に乗っていきたい。常にね」と言えば、主将も気持ちを切り替え「この勝ちを明日につなげられるように」と次戦をみつめた。最後はいつもと同じく「1つ1つ、目の前のことをやっていけばいいんじゃないかな」と締めた。【池本泰尚】