阪神は相手を上回る10安打を放ちながら、ウップンのたまる2得点。2位ヤクルトに悔しい1点差負けを喫した。象徴となってしまったのが7回無死一塁で二ゴロ併殺に倒れた中谷将大外野手(25)。金本知憲監督(50)は「あそこをファウルにするとかしないと、彼の先は見えない」と各球団が徹底する内角攻め克服へ、厳しい言葉を投げかけた。

 中途半端なハーフライナーが、もどかしさの象徴だった。1点を追う7回。先頭梅野が四球を選ぶ。最低でも走者を得点圏に進めたい局面だ。ヤクルト梅野が投じた2球目は内角速球だった。中谷は右打ちを試みるが、どん詰まりで二塁正面へ。山田哲が一塁に送球し、一塁坂口から二塁カバーの遊撃西浦に転送。一、二塁間で行き場を失った梅野が挟殺されて、4-3-6-4の併殺に終わった。

 同点機を築くはずが2死走者なしになった。するりと勝機は逃げ、ヤクルトを上回る10安打を放ちながら敗戦。金本監督も「ヒットは出たけど巡り合わせが悪かった」と首をかしげた。中谷は6回裏の守備から途中出場。7回はこの日、初めての打席だった。ベンチから送りバントの指示はなく、ノーサインの「打て」だった。だが課題の内角速球を攻略できず、指揮官も大砲候補に苦言を呈した。

 「あそこをファウルにするとかしないと、彼の先は見えない。あれだけ見え見えで(内角球を)投げてきて、それを打ち返せないのは、去年からずっとか。もう、セ・リーグの全球団にばれている。何とか、そこを今後、クリアしないと、やっぱりプロ野球ではな」

 阪神屈指の打球の飛距離を誇り、昨季はチーム最多20本塁打。指揮官は「レギュラーを取る力はあるんだけど。守れるし。そこだけよね」と言う。今季は打率2割3分8厘、3本塁打にとどまる。期待が大きいからこそ、厳しく指摘した。打線が活性化する神宮で4試合連続2桁安打を刻みながら、5カードぶりにカード初戦を敗戦。若武者の苦悩が浮き彫りになった夜だった。【酒井俊作】