感謝祭じゃ!! 広島菊池涼介内野手(28)が、同点ソロを含む4安打4打点の活躍で引退表明の新井に勝利を届けた。1点を追う5回に、10日ぶりの1発となる13号ソロで6連敗中の重苦しい空気を振り払うと、3点リードの8回は3点二塁打で試合を決めた。チームの連敗を止める大暴れで、優勝マジックも7に減らした。

本当にプレゼントしたかったのは、スラィリー人形ではなかった。1点ビハインドの5回。菊池は迷いなく振り抜いた。放物線を描いて左翼席に突き刺さしたアーチが、重苦しい空気も吹き飛ばした。広島打線が苦しむDeNA東に3打席連続安打で猛打賞となる同点ソロ。戻ってきたベンチでは受け取ったスラィリー人形を“新井さん”に手渡した。そして3点リードの8回には3点二塁打。8日ぶりに手にした勝利でマジックを7に減らし、新井に勝利を届けた。

勝てていなかったことは分かっていた。「人間的にも野球人としても育ててくれたお兄ちゃん」である“新井さん”が引退を表明してから始まった連敗は6にまで伸びた。一部の選手を除き、チームに伝えられたのは5日阪神戦終了後だったが「僕の中ではうすうす感じていたところがあった」と第六感が別れのときを予感させた。

連敗の中、菊池も苦しんだ。今季は思うように結果が出ない。自己犠牲を払った打撃でつなぎ、シーズン自己最多の45四球を記録するなど我慢の打席は続く。魅力のひとつである長打も昨季の自己最多14本にあと1本となる13号。打率は思うように上がらなかったが、8月5日DeNA戦以来、今季2度目の4安打で打率をようやく2割4分3厘まで戻した。

緒方監督は「重苦しい雰囲気がキクの1発で追いついてくれて流れが変わった」と形勢を変える働きをたたえた。ようやく連敗を止め、再び優勝へのカウントを刻んだ。「記録よりも記憶に残るシーズンにしたい」と菊池。“新井さん”には言葉では表せない思いがある。そのためにも必要だった勝利-。ともに3連覇。そしてその先に日本一へ向けて、広島が再び1歩を踏み出した。【前原淳】