ヤクルトが混戦の2位争いを抜け出す。負けられない3位の巨人に対し、今季1勝の星知弥投手(24)を抜てき。力強い直球とフォークボールで圧倒し、6回1失点の好投で今カードを勝ち越し、ゲーム差を3に広げた。首脳陣は、この3連戦を勝負どころに設定。1カ月のファーム調整期間を与え、満を持して投入する策がズバリ当たった。ベンチと選手が一丸となってラストスパートをかける。

ヤクルト小川監督のほおが、思わず緩んだ。昨年10月に右肘を手術した星が、術後初の先発マウンドで6回2安打1失点と好投。打線も巨人田口を7回に攻略し、9回に青木の2ランでダメ押しと狙い通りに加点し、星に先発勝利をもたらした。「初先発であれだけ投げてくれれば言うことがない。球に力があった。この時期にチームに勝利をもたらしてくれた。ナイスピッチング」と絶賛した。

シーズン終盤での先発復帰は、練り上げたシナリオ通りだ。8月に入り、チームはクライマックスシリーズ(CS)進出を争う好位置につけていた。星は中継ぎで起用していたが、連戦が控える9月の勝負どころをにらみ、首脳陣が断を下した。8月12日に星の出場選手登録を抹消。先発として送り込むため、2軍で1カ月もの調整期間を設けて準備させた。

2位を争う巨人との今回の3連戦を、シーズンにおける勝負の潮目と見ていた。ローテーションの谷間になるこの日に、昨季巨人戦2勝1敗で球に威力のある星を狙い通りにはめた。会心の勝利に、小川監督は「手術の影響で中継ぎだったが、ここを見据えて調整してもらった。大きな1勝」とうなずいた。

101球の熱投の影響を考慮し、星は今日14日に抹消し、先発を1度飛ばして22日からの9連戦に万全で投入する予定。先発陣は小川、ブキャナン、原以外はスクランブル状態で耐えてきたが、そこに最速153キロ右腕が加わるのは大きい。フォーカスを絞った用兵が当たり、3位巨人との3連戦を2勝1分け。ゲーム差を3に広げた。指揮官は「すぐ元に戻る。1試合1試合、勝つことに集中していければ」と引き締めた。残り18試合。足もとを固めながら着実に歩を進める。【浜本卓也】

◆星知弥(ほし・ともや)1994年(平6)4月15日、栃木・那珂川町生まれ。宇都宮工から硬式を始め、2年秋からエース。明大ではリーグ通算4勝5敗。16年ドラフト2位でヤクルト入団。17年4月1日DeNA戦でプロ初登板。同年9月に右肘を疲労骨折し、10月に手術。昨季は24試合に登板して4勝7敗、防御率4・73。183センチ、78キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2200万円。