虎が非常事態に陥った。阪神北條史也内野手(24)がヤクルト20回戦(甲子園)で左肩を痛め、亜脱臼の症状で退場した。4回の守備で三遊間の打球に飛び込み、同箇所を負傷。この日は病院に行かなかったが、今日15日に状態を確認するため、戦線離脱する可能性も出てきた。試合は2安打で完封負け。借金は今季最多タイの9に膨れた。2位ヤクルトと5・5ゲーム差に離され、本拠地でのクライマックスシリーズ(CS)開催が遠のいていく。

逆転でのCS進出に望みをつなぐはずが、追い打ちをかけられるような黒星を喫した。衝撃的な光景に、甲子園が息をのんだ。1点差の4回1死。井野の三遊間へのゴロを遊撃北條がダイブして好捕した。だが、起き上がれない。飛び込んだ際、左肩を強く地面に打ちつけた格好になった。

北條は激痛で顔を引きつらせた。右手で左肩を押さえたまま動けない。担架で運ばれて途中交代すると、場内がざわめいた。金本監督が「脱臼でしょう…」と浮かない表情を見せれば、片岡ヘッド兼打撃コーチも「心配やね…。(判断は)明日やね」と振り返った。試合後、球団広報は左肩の亜脱臼の見立てだと説明。この日は病院に行かず、様子を見ている状況。今日15日の回復ぶりからプレーの可否を判断するが、戦線離脱する可能性も出てきた。

北條を欠けば大きな痛手だ。7月以降、遊撃レギュラーに定着。規定打席未満だが、62試合に出場して高打率の3割2分2厘をマークするなど、今季育った若手の筆頭格だった。試合中に自力で歩いてクラブハウスへ向かったが、1、2番を任せられるリードオフマンが離脱すれば、CS圏内を狙うチームにとってダメージは計り知れない。

11日中日戦では先発メッセンジャーが4回途中に危険球退場。開幕からのフル回転で疲労蓄積しているとみられ、翌12日に出場選手登録を抹消された。11日には福留も走塁中に右太ももの張りを訴えており、その後3戦欠場。エースを欠き、主軸がプレーもままならない非常事態に陥っていた。この日は元気印が負傷し、弱り目にたたり目だ。

悪循環を断てず、ヤクルト先発原に凡打を重ねた。右打者は胸元をえぐってくるシュートに手を焼き、左打者はスライダーなどを駆使した投球に戸惑った。散発2安打で今季11度目の完封負け。金本監督は「原点」と言い切り、若手に闘志を求めた。「福留を欠いて迫力不足ですけど若い選手が何とか結果を恐れず、強い気持ちを持ってやってほしい。投手に向かっていく姿勢をちょっと忘れてるんじゃないかな」。2位ヤクルトとの直接対決は残り5戦だが5・5ゲーム差。最下位DeNAも1ゲーム差で迫る。瀬戸際で心の強さが試される。【酒井俊作】

◆亜脱臼(あだっきゅう) 脱臼しかかった状態。関節の可動域を超えた動作により、骨が関節から部分的に押し出され、ずれてしまうこと。痛みやしびれの症状が出ることが多い。骨が関節から完全に外れると脱臼になる。亜脱臼でも程度はさまざまで、15年に阪神陽川が左肩を亜脱臼した際には全体練習合流まで3カ月を要した。16年に左肩亜脱臼の広島鈴木はそのまま試合に出続けた。再発を防ぐために数週間は安静にするのが一般的。