西武が10年ぶりの優勝を果たし、球団40周年の節目を飾った。ついに訪れた瞬間。就任2年目の辻発彦監督(59)はマウンドそばで8度、舞った。

身近にいる1人が、辻監督の2年目の変化を感じていた。1人息子の泰史さん(33)だ。就任直後のキャンプでは「厳しいなあ。いろいろやることが多いよ」とボヤキもあったという。ところが、1年目を終えた昨年末「手応えあるでしょう?」と聞いたら「当然だ」と即答された。

父は黄金時代の主力。小さい頃、何度も優勝旅行に連れて行ってくれた。「父は特別なんだと。周りにも言われましたし」。ハワイでは清原や森監督にも遊んでもらった。父から「野球をやれ」と言われたことはなかったが、中2で始めると2日後にグラブが届いた。「やって欲しかったんでしょうね」とほほ笑んだ。

常に父がいるチームを応援してきた。「辻発彦」の一番のファンを自任するが「プロ野球選手の辻発彦は父じゃないというか。あこがれの選手」。イメージは、家では一変した。「怖い。そして細かい」。お金をくすねたら怒られた。「500円ぐらいだけど、なぜか気付く。あんなに稼いでるのに」と懐かしんだ。

大人になってからは、一緒に酒を飲み、買い物にも行く兄弟のような関係。女性の話で盛り上がることもある。会社勤めを経て、今はパチスロライターとして働く泰史さん。「この仕事を始める時は『何をやってもいい。その代わり、1円も出さないぞ』とだけ。父の名前を使わず、自分でやっていることを認めてくれてるようです」。唯一、言われるのは「孫が見たい」だそうだ。【古川真弥】