ソフトバンクが日本ハムに先勝し、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ進出に王手をかけた。1点を追う初回にアルフレド・デスパイネ外野手(32)が決勝となる勝ち越しの満塁本塁打を放つなど一挙5得点。シーズン中は苦手としていた日本ハム先発の上沢の「初球」「高め」を意識して攻略した。

もはや苦手意識はなかった。レギュラーシーズンで苦戦した上沢を打ち砕いた。

1点を追う初回、同点としてなお無死満塁。デスパイネは、見逃せばボールの「高め」直球をフルスイングで右翼席に運んだ。「完璧な当たりでしたし、最高の気分でした」。前日12日の練習を体調不良のため休んだキューバの大砲が、愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を見せた。

天敵攻略の裏に徹底された戦略があった。キーワードは「高め」「初球」だ。データ分析班からは、4戦4敗だった7月までとは違う上沢の姿が伝えられていた。シーズン前半よりも高めの球が増え、フォークが抜けることもある。ストライクカウントが増えるほど、厳しいコースを攻める傾向も特徴だった。首脳陣は「初球のストライクを打つ」ことを徹底。打線は1発回答で応えてみせた。

初回先頭の上林は「初球」にセーフティーバントを試みるもファウル。3球目「高め」の球を打つと、詰まりながらも左前に落ちる二塁打になった。工藤監督は「1死を与えるより打っていこう」と送りバントさせず、明石が四球。続く中村晃は「初球」打ちで、一塁線上にぴたりと止まる投前内野安打に。運も味方に無死満塁とすれば、柳田も「初球」を右前に同点打。9球で振り出しに戻し、最後はデスパイネがとどめを刺した。

試合前には倉野投手統括コーチが「仮想上沢」で打撃投手を務めるなど、チームの総力を結集させた勝利だ。ファイナルステージ進出に王手をかけ、工藤監督は「初戦は大事ですし、選手たちもそれを分かっていた。初回からよく打ってくれた」とニンマリ。下克上日本一への道は、痛快な天敵破りから幕を開けた。【山本大地】