矢野阪神は「続金本」で逆襲!! 阪神前監督・金本知憲氏(50)の「野球殿堂入りを祝う会」が11日、大阪市内のホテルで開催され、出席した矢野燿大監督(50)が金本野球の継承を誓った。「続金本でやりたい」と壇上から宣言。10月中旬、新監督を受諾する直前には対面して背中を押された。同志の思いを抱き、17年ぶり最下位からはい上がる。

タキシード姿の金本氏が深くうなずいた。野球殿堂入りを祝う師走のパーティー。壇上で矢野監督と肩を並べた。約900人が見守るトークは「継承式」さながらだった。新しい指揮官は言い切る。「マスコミには『脱金本』と出たりしますけど、『続金本』でやっていきたい。しっかりやりたい」。前監督が全身全霊で若手を鍛えた3年がある。力強く、バトンを継いだ。

人生の決断を後押ししてくれたのが、ほかならぬ金本氏だ。この日、矢野監督は明かす。「辞めて離れたからカネもっちゃんと呼ばせてもらうけど、カネもっちゃんに呼ばれて俺もタイガースに指導者として戻って、カネもっちゃんと片岡が辞める中で俺がやってええんか、どうやねんと自分に問いかけて。俺はカネもっちゃんと話すしか、前に進めないなというのがあった」と心境を吐露した。

10月11日に金本監督が電撃辞任を表明し、新監督候補として白羽の矢が立った。同14日に2軍監督として教育リーグの指揮を執っていた宮崎から緊急帰阪。人知れず2人で会ったという。この日のパーティー終了後、金本氏は明かした。「矢野も責任を感じていた部分があると思う。『こうなったのは、俺1人の責任だから。もし呼ばれているなら、やればいいじゃないか』とね」。迷い、戸惑う戦友を後押しした。

矢野監督も「俺も短い期間で悩んで考えたけど、カネもっちゃんが背中を押してくれたからこそ、やると決断に至った」と言い、続ける。「何か自主的なことをすると『脱金本』みたいな書かれ方もしたりするけど俺にとっては全然、脱ではない。『続』なのよ。続いているのよ。若い選手やチームに対して、いろいろやってきたことを形にしていくのが俺に与えられた部分」。覚悟を新たにした。

誰よりも鉄人金本を知るのが矢野監督だ。東北福祉大でともにプレーし、中日で敵として戦い、阪神で2度の優勝を分かち合った。「大学で見たとき、うまい選手じゃなかった。本当に。ある意味、失礼になるけどセンスもなかったと思う。対戦相手として、大学の同級生として、チームメートとしても見てセンスとか、うまくなくても、こうなれるというのを一番示した選手」。尊敬すべき友の思いも胸に秘め、チーム再建を目指す。【酒井俊作】