ヤクルトの星知弥投手が試練の道を行く。8日、浦添キャンプで5度目のブルペン入り。9日に登板する紅白戦前日に異例の110球を投げた。

1球ごとに悩み、うなずき、右腕を振った。ワインドアップ、セットポジションを約10球ずつ入れ替え、心の中ではボールカウントを想定。「隣に投げていた人が目に入らなかった」と自分の世界に没頭するほど、集中力を高めた。思うところへの制球が定まらないと天を仰ぎ、フォームを確認。直球、スライダー、カットボール。95球を超えて球がすっぽ抜ける場面もあったが、実戦を意識しながらひたすらミットに向かって投げた。「正直、バテました。疲れの中でどういう投球ができるかが大事なので」と男のど根性だった。

過去の自分を超えるため、追い込んでいる。今キャンプで100球以上の投球は3度目。「投げる体は投げないと作れない」と昭和風に自らを鍛える。全ては17年10月の右肘骨折手術でわずかに落ちた球威を戻すため。左足を昨年から数センチ高く上げるフォーム固め中だ。新人の1年目も右肘の状態が悪く、制限があり、2年目の昨年は手術後でリハビリ中。「初めて春のキャンプから投げ込みができる」と話す。

もちろん、ただ漫然と投げるのでなく「去年の秋季キャンプから体の使い方が分かってきた。だからブルペンで悪いボールが行っても、ここが使えていなかったとか納得できるんです。なぜ? を理解できるから、考えて投げられてます」と集中の質も高い。

昨年7月に中継ぎで1軍復帰も、目指すは先発ローテの座。小川監督も「星は6日のフリー打撃の登板でも良かったからね。明日の紅白戦も楽しみだね」と期待する。右腕は「先発争いをして、5枚目のローテには入りたい。徐々に信頼を得ていかないと」と覚悟を示す。9日の紅白戦では結果を残し、首脳陣に状態の良さを見せるつもりだ。完全復活へ、どんと行く。【島根純】