ハマの武士の名言が、チームを1つにした。DeNA筒香嘉智外野手が0-0の7回2死満塁、中前へ決勝適時打を放った。8回にはダメ押しの今季1号も飛び出し、計5打点の大活躍。試合前には円陣を組み「生きるか、死ぬか…」と戦国時代をほうふつとさせる言葉で仲間たちを鼓舞。自らのバットで、開幕戦の勝利を手繰り寄せた。

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主砲が、太刀を振りぬいた。5点リードの8回2死一、三塁。「みんなが打席の中で死ぬ気でつないでくれた」とチームの主将として、加勢モードを感じないわけがない。田島のフォークを完璧に捉えた。侍、DeNAの4番を張る男の今季1号が、ファンが待ち受ける右翼スタンドへ吸い込まれた。

戦局を左右する鋭利な刀を懐に宿す。戦は序盤まで拮抗(きっこう)していた。やはり号砲を鳴らしたのは、筒香だった。0-0の7回2死満塁。最高のシチュエーションに球場のボルテージは上がるばかり。初球ワンバウンドのフォークを空振り。カウント2-2となり、5球目、再びフォークがやって来た。見逃せばボール。「体が勝手に反応した」。腰をグッと落とし、バットを抜いた。中前へはじき返し、決勝の2点適時打。張りつめていた球場の雰囲気を切り裂いた。

筒香 開幕戦という独特な緊張感の中、ここまで来るために、みんながキャンプから必死にトレーニングして、そこに携わる人もいて、今がある。そういう中で勝てたことはうれしい。

ハマの主将として、威厳を示した。試合前、筒香を中心にベンチ裏で円陣を組んだ。選手、スタッフらと肩を組み、言った。

筒香 生きるか、死ぬか。斬るか、斬られるか。143試合戦いましょう。さあ、行こう。

時は平成。筒香の目の前に広がる風景は戦国時代。打たなければ、敗北、死が待っている。仲間たちへ発した言葉を体現するかのごとく、生きるための、明日への刃を振るった。【栗田尚樹】