矢野阪神が劇的なサヨナラ勝ちで開幕戦を飾った。1-1同点の延長11回、代打鳥谷敬内野手(37)の三塁打から相手暴投で決勝点をゲット。プロ16年目で初めて開幕スタメンを外れた男が、意地の一撃で矢野燿大監督(50)に初陣勝利を届けた。満員札止めの京セラドーム大阪に、今年最初の六甲おろしの大合唱。最下位からの頂点へ、最高の弾みがつく球春到来だ。

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白球が捕手中村のミットをすり抜け、バックネットまで転がった。延長11回1死三塁。石山が投げた近本への初球はワンバウンドした。三塁走者の代走江越がホームを踏んだ。サヨナラだ。ベンチからドッと虎ナインが飛び出した。ヒーローは誰…? 追いかけられたその先に、歓喜のシャワーを浴びる鳥谷がいた。劇的フィナーレの主役は、お立ち台に立って照れくさそうに笑った。

「本当はホームランで決めたら格好良かったんですけど、三塁打のあと代走も出されてますし、最後決めたワケじゃないんで、ちょっと恥ずかしい感じもします…」

1-1で迎えた延長11回。土壇場の先頭で代打の打席に立った。フルカウントから石山の7球目だ。真ん中速球を思い切り引っ張ると、打球は高々と右翼上空を舞いフェンスに直撃。快足を飛ばして、一気に三塁に達した。「ベンチから全員出てくる感じだったので、それに乗せられた(笑い)」と、珍しく感情を爆発。両手をたたいて喜んだ。無死三塁。ベテランのひと振りで決定機を築き、サヨナラ劇につなげた。

球団史上最多の安打数を誇る実力者が、泥臭く前を向く。2月の沖縄・宜野座キャンプは志願して遊撃のレギュラーを競った。キャンプでは初日から若手に交じって全メニューを消化。開幕戦こそ、オープン戦好調の木浪にスタメンを譲り、自身が新人から続けていた開幕戦先発は15年連続で途切れたが、勝負どころでの代打で輝いた。

矢野監督もその姿勢に感服だ。「16年連続スタメンっていうのは、俺がストップさせちゃったけど、いい場面で何とかと思っていた。昨日の練習も外野で(自分の練習後)ずっとボールを捕ってるトリの姿っていうのを。見てたから。気持ちはすごく感じていた」と、深くうなずいた。

「まずは今日の勝ちを明日につなげて、明日、明後日と勝ちたいと思います。個人的にはしっかりチャンスを生かして、もう1回ショートのポジションに立てるよう頑張っていきたい」

黄色に染まったスタンドに向かって、鳥谷はそう宣言した。昨季、10連敗を喫するなど最下位に沈んだ一因となった因縁のヤクルト戦から開幕星を挙げた。逆襲を期す鉄人の一撃からのサヨナラ劇。矢野阪神、最高の船出だ。【桝井聡】