阪神矢野燿大監督は「指揮官初黒星」を喫しても攻めの采配を貫いた。

劣勢の戦いで京セラドーム大阪が沸きに沸いた。1点を追う5回2死二塁で1番木浪に打席が巡る。矢野監督がベンチを飛び出す。代打鳥谷-。四球を選んで後続に託した。得点にならなかったが「矢野イズム」が色濃く出た場面だ。敗戦後、早いイニングから勝負手を打った意図を明かした。

「ちょっと空気変えたいなと思って。木浪は打てなくなっちゃうと、どうしても安打も欲しい。第1戦だって内容自体が別に悪かったわけでもない。でも、ちょっと空気を変えたいところで空気を変えにいって。一番変えられるのはトリ」

3月29日の開幕戦から新人木浪を遊撃スタメンに抜てきした。だが、11打席無安打でチャンスを迎えていた。チームもヤクルト先発高梨に苦戦し、4回に1点を奪っただけだ。ルーキーなら、気負ってもおかしくない。指揮官は勝つための近道を歩む。開幕戦でも代打三塁打を放っていたベテランしか醸し出せない、満点のムードにかけた。

この日も前のめりで戦った。6回、バレンティンの大飛球が左翼ポール際に飛び込み、本塁打のジャッジが出ると勢い込んでベンチを飛び出した。「明らかなファウルだった。全然切れたのに回しているから」。審判団のリプレー検証でファウルに覆ったが接戦をモノにできず。それでも、ベストを尽くして、開幕カードを2勝1敗の好発進だ。

敗戦後の立ち居振る舞いも「矢野流」だった。負けてもナインがグラウンドに整列してあいさつ。矢野体制になって取り入れたセレモニーだ。「勝ったときは一緒に喜び合って、負けたときは気持ちのつながりというのが(ファンとの)お互いのなかにできていければいい」。また、テレビ中継局の試合後インタビューを黒星で行うのも超異例だ。負けても堂々とファンの前に出る。全力で戦い切った証しだろう。【酒井俊作】