社会人野球のきらやか銀行(山形)が新監督のもと、2年ぶりの全国舞台を目指す。現役時代に主将としてチームを引っ張った村上真新監督(39=写真は題字)が、4年ぶりにチームに復帰。冬場から3月の静岡・庵原キャンプでは徹底的に打撃の質にこだわり、厳しい練習を積んできた。10日開幕のJABA長野大会で今季初の公式戦を迎える。

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選手としてはかなえられなかった夢に、今度は監督として挑戦する。村上監督は02年に入行し、捕手や内野手として活躍。3年目には24歳で主将に任命された。その後は銀行合併の影響でチーム存続危機の中、2年間のクラブチーム移行時もプレーを継続。選手兼コーチの13年に現役を引退し、15年を最後に野球部を離れた。「続けたい気持ちもあったけど、なかなか勝てなくて。そろそろ社業に向いていく時期かなと思った」と未練を断ち切った。

皮肉なことに翌16年に初の都市対抗出場。「悔しい気持ちが勝るかと思ったけど、純粋にうれしかった。本当に感動した。ずっと見守ってきた選手たちが行ってくれたんで」。応援で東京ドームを訪れ、強豪パナソニックに全国初勝利した瞬間も、その心境は変わらなかった。

山形駅前支店では融資や渉外の営業職に従事。特別扱いのない環境で働いたことで気付かされたこともある。職場の人たち、お客さんから、野球部に対して、期待から批判まで忌憚(きたん)のない「生の声」を耳にした。「キャンプに行けたり、仕事を融通してもらったり。今の環境が当たり前だと思わないでほしい。感謝を忘れず、仕事もしっかりしてほしい。野球だけじゃないんだよ」と人間としての成長も求める。

社会人代表で絶対的エース小島康明(26)に注目が集まるが、「野手も投手もいつまでも小島頼りではダメ。全員がもう1つレベルを上げないといけない」とチームの底上げが必須と認める。「もっともっと意識を高めていきたい」と再びユニホーム姿で東京ドームに立つべく、新たな戦いに挑む。【野上伸悟】

◆村上真(むらかみ・まこと)1980年(昭55)4月1日生まれ、宮城県仙台市出身。仙台高から東北学院大を経て02年、当時の山形しあわせ銀行に入行。04年秋から07年まで主将。殖産銀行との合併できらやか銀行となり、きらやかベースボールクラブを挟み15年までチームに在籍。3年間社業に専念後、今年1月に監督就任。右投げ右打ち。177センチ、80キロ。